文句なしの一戦だった。8月10日に行われた日本対韓国戦である。札幌ドームを舞台とする宿敵との激突は、3-0の快勝に終わったのだ。

ホームで韓国を退けたのは13年ぶりだった。3点差をつけて勝つのは、実に37年ぶりだという。13年前の勝利は現場で取材をしているが、37年前となるとさすがに記憶にない。

37年ぶりの大勝とのことだが、日本だって大差で負け続けてきたわけではない。1992年のバルセロナ五輪最終予選も、広島で行われたアジア大会も、1996年3月のアトランタ五輪最終予選決勝も、記憶に鮮烈なフランスW杯最終予選のホームゲームも、すべて1点差で勝負がついている。勝っても負けても僅差のスコアで、勝つならきわめてスリリングに、負けるならはっきりとした実力差が横たわるというのが、韓国との戦いの歴史だったと思う。

ひとつの転換点になったのは、1997年9月7日である。国立競技場で行われたシドニー五輪最終予選の壮行試合だ。宮本恒靖、中田英寿、中村俊輔、稲本潤一らで構成されたU-22日本代表は、韓国を圧倒した。福田健二、平瀬智行 (2点)、遠藤保仁がゴールをあげ、韓国の反撃を終了間際の1点に抑えた。4-1の快勝である。

「完敗だった。すべての面で、技術、戦術のすべての面で完敗だった」
試合後の記者会見に現われたホ・ジョンム監督は、自分たちが劣っていたことを認めた。認めざるを得なかった、というべきだろう。

「主審の判定にも不満はある」というささやかな反論は、3週間後にソウルで行われたリターンマッチで説得力を失う。中田英を欠きながら、日本は1-0の勝利を収めたのだった。

その後も日韓戦は接戦の連続だったが、少なくとも我々に苦手意識はなく、韓国も "上から目線" で臨むことはなかったと思う。国立に4万人強の観衆を迎えた1999年の一戦は、それぐらいインパクトが強かった。

両国ともに海外クラブ所属選手が増えたことで、"ガチンコ"の勝負がなかなか実現しなかった。「ベストメンバーではない」ということわりは、勝敗のエクスキューズとして付きまとった。

数年間にわたってぼんやりとしていた両国の力関係が、はっきりとしたのは昨年5月である。南アフリカ・ワールドカップの壮行試合として行われた一戦は、0-2の完敗に終わった。

開始早々に先制点を奪われ、後半終了間際に追加点を喫するのは、ホームチームが敗戦するパターンとしてしばしば見受けられるものだ。しかし、この試合ばかりは違った。日韓両国には、残酷なまでの実力差が存在した。もう一度やっても勝つのは韓国で、10回やっても一度勝てるかどうか…… 日本は完膚無きまでに打ちのめされた。

この試合でズバ抜けた存在感を発揮したのは、99年の顔合わせで前半終了を待たずに交代させられたパク・チソンだった。11年前は18歳の左サイドバックだった彼は、アジア屈指のMFへ成長を遂げ、韓国のシンボルとして日本に立ちはだかった。

今年1月のアジアカップでは、日本がPK戦で勝利をつかんだ。しかし、試合終了間際に同点へ持ち込んだ韓国の勝負強さを、改めて見せつけられた一戦でもあった。結果は得たものの、内容で上回った勝利ではなかった。

8月10日のゲームで、日本は力関係を塗り替えた。圧倒的なまでに。
「たくさんの声援をおくってくれたファンの皆さんに、いい試合を見せられなかったことをお詫びします。Ｗ杯3次予選を控えた我々にとって、今日の試合は良い薬になった」

試合後の記者会見に現われたチョ・グァンレ監督が、かつてのホ・ジョンム監督に重なる。目尻に深い皺が刻まれた表情は、困惑と動揺に満ちていた。

チョ・グァンレ監督によれば、韓国代表の海外組には試合勘に問題を抱えていた選手がいたという。モナコ (フランス) に所属するパク・チュヨンは試合から遠ざかっていたため、「ゲーム感覚がかなり落ちていた」(チョ・グァンレ監督) とのことだった。左サイドバックのキム・ヨングォンが前半早々に負傷し、代わって出場したパク・ウォンジェも10分強の出場時間で負傷交代するなど、想定外のアクシデントに見舞われたのも事実だ。

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