東日本大震災直後、企業が東京から大阪へ本社機能の一部などを移す動きが起こったことで、大阪のオフィス需要が高まったが、どうやら一過性に終わったようだ。

   余震や東京電力の福島原発事故による放射線漏れを心配して、カジュアル衣料のH&Mや家具・インテリアのイケアといった外資系企業を中心に、大阪への「疎開」が相次いだが、電力不足への懸念が広がりで、もとに戻ってしまった。

「関電が万全であれば…」

   オフィス仲介の三鬼商事によると、2011年6月末の大阪市中心部(梅田、淀屋橋、本町などの6地区)のオフィスビル平均空室率は、前月に比べて0.24ポイント低下して11.76%だった。改善は2か月ぶり。ただ、その幅はわずかで、同社は「テナント誘致競争は厳しさが感じられる」としている。賃料も下落傾向が続いている。

   また、不動産サービスのシービー・リチャードエリス(CBRE)の調査では、6月期のオフィス空室率は3月期に比べて0.1ポイント上昇の11.2%となった。4〜6月期に3棟のオフィスビルが竣工したが、Sクラスと呼ばれる延べ床面積1万坪以上のビルが空室を抱えたまま竣工したことで空室率が上がった。

   大阪市ではこうした大型供給が続いている。それもあって供給過剰がおさまらず、空室率が高止まり傾向にある。それでも、「震災前の予測よりも、震災後のほうが落ち込みは小幅です。一時避難の企業は去りましたが、バックアップとしてオフィスを抑えている企業はまだ残っています」(CBREエグゼティブ・ディレクター 高橋フレッド氏)という。

   オフィス移転支援サービスを手がける「オフィスナビ」の金本修幸代表は、「震災後に東京から避難していた企業は6月にはほとんどが帰っていき、すっかりもとに戻ってしまいました」と、肩を落とす。

   原因は、電力不足が関西電力エリアにも広がってきたためだ。関電が所有する、福井県にある原発の再稼働が見送られ、8月までに計6基が運転停止となる可能性が高まっている。

   関電は「節電協力」を呼びかけているが、このまま原発が再稼働できないと深刻な電力不足に陥ることになる。

   金本代表は「本社とは言わないまでも、大阪に本社のバックアップ機能をもたせるために支店を開設しようという動きはかなりありました。おそらく関電が万全であれば、開設していた企業はあったでしょう」と話している。

データセンターは空きがない状況

   そうした中で、データセンターの移設は進んでいる。震災直後から、計画停電でサーバーやパソコンが一時的にでもダウンするのを恐れるIT企業などからの問い合わせは比較的多かったが、「リスク分散の点から、東京と大阪のどちらかが被災しても大丈夫なように、データセンターは東西に分けて置いておこうと考える企業が増えているようです」と、金本代表は話す。

   強固な耐震性や自家発電装置を備えていることなど、大規模データセンターを受け入れることできるオフィスビルは数が少ないこともあり、「空きがない状態」という。

   とはいえ、データセンターだけではオフィスビル全体の空室率を押し上げるほどの需要があるわけではない。

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