「みんなが知っていることだが、PKで勝敗が決まるというのは、やはりアンフェアなものだ。だが、これが現実だ。今回、われわれの試合内容が大変良かったとは思わない」

 勝者であるパラグアイの監督はそう試合を振り返った。

「試合内容に対しての悔いは残っていません。ただ、誇りを持って戦っていた素晴らしい選手を勝たせてやれなかった。これはやはり私に責任がある。私に執着心、執念が足らなかったというふうに感じています」

 岡田監督は敗戦の弁をそう述べた。

 120分の戦いは0−0で終わり、PK戦で勝敗が決まる。日本の3番目のキッカーである駒野のキックはクロスバーにあたり、パラグアイは5人の選手全員がゴールとなった。なんとも呆気ない幕切れだったのかもしれない。選手たちは「悔しい」と何度も繰り返した。しかし、中澤は悔いはないと話していた。やれることはやりきったと。

「とにかくベスト16の壁を破って、スペインなのか何なのかわからないですけど、どっちが来てもいいからベスト8と。ベスト16の壁ってのは俺らが考えているより高かったのかなと。でもその壁を乗り越える力は、このチームにはあったとも思います。悔いはないです。悔いのない時間を過ごしてきたんで。ああすればよかった、こうすればよかったというのはないです。毎日毎日、やるべきことは4年前から始まってたんで。この結果にもってこれたというのは本当に胸を張っていいと思います。全力で戦えたと思うし、勝ちに対するこだわりとかは見せられた」

 得点を奪わなければ、次のステージへ進めない決勝トーナメント。パラグアイも日本も自陣を堅く守り、攻撃面では精彩を欠いた。両者はリスクを冒さず、慎重な試合運びとなり、ゲームの迫力は乏しい。数多く詰め掛けた外国人メディアにとっては物足りない1戦だったに違いない。パラグアイのことは別にして、日本にとってはここが限界だったのかもしれない。もちろん、あのシュートが決まっていればという場面もあったし、この試合のパラグアイの出来を考えれば、勝てた相手だったと考えるのも当然だ。

 けれど、1カ月前に布陣を変え、戦い方を変え、急造チームで戦ってきたことを思えば……攻撃の精度を高める時間は足りなかった。攻撃陣のストレスは小さくは無かっただろうが、それでも勝つためには守備に汗をかいた。

 デンマーク戦後の会見で、岡田監督は「主力の何名かが調子を崩していたから、現在の戦い方をするしかなかった」とも取れる発言をしている。果たして本当にそうだったのだろうか? 韓国に敗れ、W杯出場国に連敗を続ける中で、世界との差を感じて戦い方の変更を決断したわけじゃなかったのか? 主力が万全であれば、戦い方を変えなかったのだろうか? 監督の決断の理由はわからないが、W杯ベスト16という結果を残せたのは、間違いなく、監督の英断があったからだ。

「準備期間でうまくいかなかったところは間違いなくあった。そこから監督が踏ん切りをつけるというか、違う形でやるという決断をしてくれて、そこでチームがいい方向にいったんじゃないかというのもある」と長谷部が語る。

 大会直前に先発落ちをした中村俊輔も「大会前に(守備から入る戦い方が必要だと)監督が気づいてよかった。4−4−2のまんまで僕たちがボールを持つというサッカーをしていたら、どうなっていたか。あれで守りを固めるために阿部ちゃんを1枚入れて、守りから速攻という形に、ああいう時期に変えたことで、逆に大会前に刺激があって、みんなが引き締まったこともあると思う。いろんな面でいい方向に転がったと思う。選手もそれに応えたし、いろんな作用があるから」と振り返っている。