心に火が点くナイスゲームでした!

韓国戦で0-2完敗を喫し、自信喪失・意気消沈・最低の雰囲気に落ち込んでいった日本代表。しかし、今日、オーストリア・グラーツで底を打つ音がキーンと響きました。飛び散った火花が僕らの心にも火を点けました。激しい雨が降るスタジアム。居並ぶスターたち。その中で日本代表は燃えていました。胸の真ん中の火の玉が、少しずつ渦を巻きながら大きくなり始めました。打ち鳴らした手がまだ熱を持っています。こんな試合が見たかった。手応えを感じる1-2の敗戦。本番へ向けて着実な一歩を刻む試合となりました。

イングランドは感じたことでしょう。日本は驚きに値するチームだと。試合が始まるまでは、アジアの片隅で飛び回っているハエ程度に思っていたかもしれません。日本のスカウティングなどしていないでしょうし、誰が誰なのかもわかっていなかったはず。しかし、試合の中で名前を覚えさせるような戦いを見せました。GK川島の闘志はランパードをも怯ませました。左サイドに鍵をかけた長友はイングランドのサイドプレーヤーにことごとく落第点をつけてやりました。中盤で献身的に奮闘した大久保は、人をイライラさせる能力がワールドクラスであることを証明しました。アンカーとしてバイタルエリアを封印した阿部ちゃんは「和製ベッカムここにあり」を高らかに宣言。そして日本の先制点を決めた闘莉王は、不甲斐無いイングランドFW陣に「点はこうやって取るんだよ!」と華麗なダイビングヘッドで活を入れました。

どうせセルジオ越後さんあたりからは、「相手は本気じゃなかった」「前半トバして後半バテるいつもの試合」「オーストラリアに負けたときと何も変わってない」などのお説教が出るでしょう。(以下セルジオ調で)しかし、忘れちゃいけないのは、日本は相手を油断させるためにわざと負けてるということ。1試合に2点もオウンゴールするチームなんてワールドカップではあり得ないですよ。しかも本番で戦うのはイングランドじゃないのね。もっと弱いんですよ。逆にイングランドが戦う相手は全部日本より強い相手なのね。それが日本のDFに助けてもらって勝ったからって、喜んでいられないじゃないかな。日本が3人しか交代してないのに、イングランドは6人も選手交代しての結果に意味なんてないですよ。人数かけて押し込むだけなら、1966年から何も変わてないということ。

仮に今日のイングランドが全力でなかったとして、それが何なのか。日本は周到に自分たちの評価を下げ、相手に油断の芽を植えつけてきました。意図的に相手の全力を出させないように仕向けてきたのです。カメルーンやデンマーク、ましてオランダが日本相手に死力を振り絞ることなどないと断言できます。それでも勝てる、勝たねばならない相手だと見下しているのです。もし、そんな「絶対に勝たねばならないボーナスステージ」がイングランド戦のような展開になったなら。苛立ちや焦りは何倍にも膨れ上がります。ただの練習試合ですら、イングランドはあれほど苛立ちを見せたのです。世界の名将カペッロが試合中に文句をつけに来るほどに。本番の空気と刻々と過ぎていく時間の中で、その苛立ちを鎮めるのは容易ではありません。

そのためにも本番のその日その時まで、日本は静かに負けを重ねればいいのです。今回も「日本は1-2で負け」「やはり雑魚」「ビデオ見る価値ナシ」と対戦国を安心させてやりました。どうぞ本番まで、そのままでいてください。

勝つのは本番だけで十分。

世界中で使い古された「ワールドカップに簡単な試合などひとつもない」という言葉を、2010年6月、南アフリカで、世界のスターたちに教えてあげましょう。