健康的なだけでなく、朝夕のラッシュから解放されるとあって、近年は自転車通勤がブーム。中にはかなりの距離を走行する人もいるが、オランダ・アムステルダムで開かれている第25回欧州ヒト生殖学会議で、スペイン・コルドバ医大のディアナ・ファーモンデ教授らが「日常的に長距離のサイクリングをしている男性は不妊リスクが高まる」とする研究結果を発表した。同教授らによると、週300キロ以上走行している男性の集団では、正常な精子の数が減少していたという。

自転車と性機能障害に関する研究結果は、2002年に発表された米国立労働安全衛生研究所(NIOSH)などによる男性警察官を対象としたものを皮切りに、現在までに数件が報告されている。いずれもサドル先端部分による会陰部への圧迫が原因とされており、女性への影響も指摘する研究や、先端部分をなくしたサドルで勃起機能が向上することも報告された。

今回研究では、国際的に活躍するトライアスロン選手15人が対象。選手たちには3日間の節制を依頼して精子を採取し、各選手のトレーニング方法を分析したうえで、その影響を調べている。

その結果、自転車に乗っている時間が長いほど異常な精子の割合が高い傾向にあり、週185マイル(約298キロ)、1日に約25マイル(約40キロ)以上の自転車トレーニングを行っている選手では、正常な精子の割合が4%以下であることが分かった。

バーモンド教授らによると、(1)サドルによる圧迫と摩擦、(2)肌に密着したトレーニングウェアによる体温上昇、(2)運動によるストレス―の3要因が精巣への障害や精子の酸化性損傷を引き起こすという。一方、ランニングと水泳のトレーニングでは、正常な精子減少との相関関係が見られなかった。

ファーモンデ教授は「自転車競技のアスリートが練習を始める時、こうした影響について理解していないだろう」とし、「こうしたスポーツマンに対して、保護をする方法を考える必要がある」と訴えている。アスリートに限らず、自転車通勤などで長距離を走行する人への影響もありそうだ。英紙タイムズでは、別の専門家の意見として英シェフィールド大のアラン・ペーシー上級講師のコメントを掲載している。同講師は「ストレス解消にサイクリングは重要」としたうえで、「自転車に乗る男性が、乗らない男性よりも生殖能力が低いとする根拠はない」と断言。通常のサイクリングでは影響はないという見解を示した。同講師は、英国では現在よりもサイクリングが一般的だった40年前にベビーブームが起きたことも挙げている。