3/14日(土)から宮崎駿監督の初期作品『ルパン三世1st.TVシリーズ』が“TV考現学シリーズ第一弾”と銘打ち、渋谷のミニシアターで上映される。上映するのは渋谷マークシティ道玄坂出口近くにあるシネマ・アンジェリカ。2005年12月にオープンした渋谷の“隠れ家”的なミニシアターだ。スタジオジブリの両巨頭、高畑勲・宮崎駿コンビによる東映動画時代の作品『パンダ・コパンダ』(72)や両監督が多大な影響を受けたことを認めているフランスのアニメ『王と鳥』(80)など、アートと娯楽性を兼ね合わせた世界各国の作品を上映している。

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冒頭の『ルパン三世1st.TVシリーズ』は、東映動画を離れた高畑・宮崎コンビが「Aプロダクション演出グループ」という名義でシリーズ途中から参加した同作(71〜72)の傑作選。おなじみルパン、次元らが知恵と度胸とチームワークでお宝を次々と手に入れていく様子は、若かりし頃の宮崎、高畑ら個性派アニメーターたちの強い絆が反映されているかのようだ。

アンジェリカの代表である畠中基博氏に同劇場とジブリの関係について尋ねた。ちなみに畠中氏はテレビ版『私立探偵 濱マイク』(02)や『いつか読書する日』(04)などのプロデューサーとしても知られる。「せっかく作った作品を旬のタイミングで上映できる劇場が少ない。ならば小さくても自分で劇場を作ろう」と、2005年に閉館したシブヤ・シネマ・ソサエティを自ら改装して、アンジェリカをオープンさせた粋な御仁なのだ。

「ジブリとの付き合いは、ジブリの鈴木敏夫プロデューサーから初対面にも関わらず、『もののけ姫』(97)の声優のキャスティングを頼まれたのが始まり。それまでろくにアニメは観たこともなく、僕に出来るのかなあと思ったりしましたね。キャスティングは1回だけかと思っていたら、なぜか『千と千尋の神隠し』(01)以降も参加しています。最近はジブリのみなさんとも打ち解けて、宮崎さんから『畠中さんは鈴木プロデューサーと顔が似てるよ』なんて言われたりしました(笑)」

アンジェリカとジブリは資本提携などの関係はなく、あくまでも畠中氏が鈴木プロデューサーに恋愛感情をもっていることで成り立っているそうだ。

「仕事を通して面白いことをやれたらいいなという思いが鈴木プロデューサーに共感してもらっているのかな。アンジェリカという名前は、NYのアンジェリカ・フィルム・センターに因んだもの。聞いた話ではアンジェリカおばさんという婦人がいて、相続した財産で自分の観たい映画を常に上映するための劇場を作った、ということです。その話を聞いて、ボクは胸キュンしたんです(笑)。渋谷のアンジェリカも、ボクが“輝いているなぁ”と感じる監督や俳優たちの作品を上映している劇場と言っていいかもしれませんね」

『ルパン三世』第11話には「粋にやろうぜ」というルパンの決めゼリフがある。アンジェリカの運営方針とルパンの職人的美学は通じるものがありそうだ。【ライター長野辰次】

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