「集中力だけはなくて、パスや判断力の速さという面でもまだまだ足りない。上のレベルに行けばそれがもっと大事になってくる。そういう意識も必要だ」
 今回、A代表として初めて、タイトルがかかったアジアの大会に出場した鈴木はいう。「この大会は、最終目標ではないけれど、結果を残さなくちゃいけない大会。そこで結果を残せなかった責任というか、その重さをすごく感じている。自分はサッカーをするしかないと思うので、この体験をフィードバックして、自分が成長するしかない」

 韓国戦後のミックスゾーンは、同じ敗戦でも、サウジアラビア戦後とは違う空気が漂っていた。落胆に傷ついていた準決勝後とは違い、重い口を一旦開くと言葉があふれ出す選手が多かった。それは、悔しさがそうさせているのだ。悔しさは不甲斐ない自分自身を責め、言葉では語りつくせないとわかっていても、反省点や課題が次々と口に出る。そして、何よりも誰もが下を向いてはいなかった。この敗戦を無駄にはしないという、覚悟と勇気が感じられた。

 チームが成長をするために、敗戦はいい薬になる。トルシエ時代、アジアカップレバノン大会で美しいサッカーで勝利した後、フランスに0−5で敗れたときのことを思い出す。あの試合後も、誰もが話し続けていた。

「アジアカップで優勝して得た自信をフランス戦で粉々にされた。あの経験があったから、早く海外に出なくちゃと思った」以前、中村俊輔が語っていた。韓国戦後、ミックスゾーンでは何も語らなかった中村。きっと話し始めれば止まらない“思い”があったに違いない。

 準々決勝、準決勝で経験したことを活かせなかった韓国戦。そのことを一番感じているのは、そのピッチに立った選手たちだろう。アジアカップで味わった屈辱が彼らを進化させる。今はそう信じるしかない。