「ソニーがゲーム機戦略を見限ったのではないか」という憶測が流れている。2006年末に発売された「PS3」は、ライバルの任天堂Wii」に大きく水を開けられている。そして、ソニーが「PS3」に搭載している半導体「Cell」(セル)の次世代製品向けの投資を大幅に削減する、と07年2月13日に発表したのも憶測を加速させている。

半導体生産は外部委託

   発表によると、ソニーは04年〜06年度までの3年間で半導体関連の設備投資に4,600億円を費やしたが、07年度からの3年間は当初の予定を変更し2,600億円前後にする。また、これまで開発設計、生産を一貫して行っていたが、生産は外部委託の検討に入ったのだという。当初の予定では、次世代の45ナノ半導体をゲーム機用に08年頃から生産設備を整え量産する計画だった。
   07年2月14日付の朝日新聞によれば、

「半導体事業の中核であるセルには06年度までの3年間で約2,000億円を投じたが、今後ゲーム向けの大型設備投資を見送る」
「次世代の45ナノも08年末から09年初めごろの量産開始を予定していたが、用途がゲーム機以外に見あたらず、投資を回収できない恐れがあった」

   などの理由で、投資計画を変更せざるを得なかったのだという。

   「セル」は「PS2」用の半導体として東芝IBMと共同で開発。自社の他の家電製品や、他社への販売も計画されていた。「セル」生産のイニシアチブを握っていたのがSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)である。そのSCEも06年12月1日に久夛良木健社長が会長になり、平井一夫氏が新社長に就いた。

「戦略転換は偏った見方」とソニー

   ゲーム業界に詳しいジャーナリストはソニーがゲーム機を見限った可能性について、J-CASTニュースにこう話した。

「前のPS2は1億台以上売れ、ソフトもそれなりの数が出ましたが、PS時代に比べソフトのミリオンヒットが全然出なくて、PS2用のゲームを作っていたゲーム会社の倒産や合併が相次いだことでわかるように、PS2事業はゲームとしては失敗だったんです。PS3は明らかにライバルのWiiに水を開けられ在庫の山。ゲーム機はソフトを売るために値段を下げて販売しますが、PS3は現在、1台売ると3万円の赤字といわれています。ソフトもまだ、これといったヒットが出ていない。PS3の先行きも怪しく、台所事情がいいとはいえないソニーが、ゲーム機事業を見限っても何の不思議も無い」

   ソニーはゲーム機事業を見限ったのか。ソニー広報はJ-CASTニュースに対し、

「ゲーム機戦略を転換する報道がありましたが、それは偏った見方で、今後3年間に何の事業に投資を集中するかという戦略の中、ゲームも引き続き投資を集中しますし、特に、薄型テレビやデジカメ、ブルーレイ・ディスク機器に投資を集中するという方針を発表しました。半導体生産の委託は、PS2時代は生産できる外部の会社がなかったため自社でやっていたということです」

   と話した。