新銀行東京が赤字のトンネルから抜け出せない。そればかりか、石原慎太郎東京都知事の3選が果たせなかった場合、存続できない可能性までささやかれている。

   新銀行東京が2006年11月に発表した07年3月期中間決算によると、経常利益は154億1,500万円の赤字、中間純利益が154億2,300万円の赤字だった。本業のもうけを示す業務純益で9,600万円の赤字で、21.01%もの自己資本比率があるものの、同3月末比で9.30%も減少。前年9月末比で54.89%も減少。このままでは自己資本を食いつぶす勢いだ。

預金者保護の観点からも開業3年目黒字が必要

   経済誌「FACTA」2007年2月号は「重篤『慎太郎銀行』の深き闇 〜クリスマスに届いた金融庁の『最後通牒』。2年で500億円の大出血が、石原3選の最大の障害に。〜」と題して新銀行東京の赤字の膨張ぶりがあまりに急激であること、また同行が石原都政のアキレス腱であることを伝えている。
   新銀行東京は、そもそも石原氏の「鶴のひと声」で設立が決まったようなもの。当時、銀行の貸し渋りが激しく企業の倒産が相次ぎ、「東京都の中小企業を救う!」と、石原都知事が2期目の選挙公約にぶち上げたのがきっかけだった。
   金融庁が「オーバーバンキング」といって銀行の数減らしに躍起になっていたのを横目に、2001年4月にBNPパリバ信託銀行を買収して設立した。
   新しい銀行が設立された場合、「3年後の黒字化」は銀行法施行規則第1条の8-3項で”約束”されている。セブン銀行はこの約束を果たし、ジャパンネット銀行ソニー銀行イーバンク銀行は黒字化に5年かかっている。新銀行東京は、BNPパリバを買収しているので同行に新たに銀行免許が認可されているわけではない。つまり、看板は「新銀行」だが、新銀行ではないのだ。
   J-CASTニュースは金融庁に対して、「開業3年目の黒字化の約束は、同行に関係ないのか」と質問した。担当者は、「新銀行東京に銀行免許は出していません。しかし、株主がかわり、また預金者保護の観点からも3年後の黒字化は認識していただいている」と、同行の経営状況を注視していると話した。
   とはいえ、開業2期目のこの3月期の赤字は確実で、あと1年で黒字化できるか、あやしいのも事実。黒字化が未達の場合の行政処分について、金融庁は「答えられない」とも話した。

石原都知事の3選が生き残りの条件

   07年2月12日付の日本経済新聞は、「『新銀行東京』再建へ経営陣刷新、都知事選の争点に」と、新銀行東京が再建計画づくりに着手した、と報じた。経営陣を刷新し、08年3月期の黒字化目標を1〜2年先送りする方向で金融支援などを検討するという。
   新銀行東京は「当行に取材があったわけではなく、(日経の)憶測に基づくもの。とくにコメントすることはない」としている。
   新銀行東京にヒト(職員の出向)、モノ(店舗網)、カネ(出資)を提供し、協力関係にある東京都内の信用金庫のあいだでも、「いまだに『石原銀行』と呼ばれているように、石原都政のアダ花になっちゃうよ」(大手信金の役員)と、銀行の生死と石原都知事の再選は一蓮托生だとの話でもちきりだ。
   経営資源を「中小企業に特化する」というが、それではこの2年間と変わらない。そもそも同行は、取引先の開拓も信金からの紹介で広げている。それにもかかわらず、「『正常先でないと受け付けない』とか、『段階的に保証料をつけて企業を選別する』とか、注文が多すぎる」と、大手信金の役員は憤慨する。

   正常な融資先であれば、自分たちで融資したほうが収益なるのだから、わざわざ他行に紹介などしないし、「(段階保証料については)企業によっては1%も乗せてくる。それでは企業のほうからお断りだって言いますよ。10社紹介しても取引するのは、1、2社あればいいほうじゃないですか」と、別の大手信金の幹部は相手にもしない。
   その幹部は「とにかく高飛車で、殿様商売そのもの。(石原都知事)態度といっしょだね」と続ける。
   もはや信金にも見放された状態では自力再建などおぼつかない。日経の指摘どおり、4月の選挙ではこの新銀行の経営は争点になることは間違いないだろう。石原都知事が再選すれば、しばらくは現状のまま。たとえ再選を果たしても、黒字化への道は厳しい。となれば、新銀行を待ち構えるのは買収しかない?