平原：今回は「シチリアーナ」という曲で、すごく今までにない歌詞を書いたんですけど、編曲も沢田完さんと色々話し合って「とても切ない曲にしよう」と言われて。私もそういう歌詞を書いたことがないから、自分に挑戦してみようと思って。「一番悲しい状況ってなんだろう？」と思った時に、私は女性ですから、もし子供が出来て、その子供が自分より先に死んだ時って本当に絶対悲しいと思うんです。実際にテレビを見ても、新聞を見てもそういう事件が多々あって、その中で物語を書き始めたんですね。自分の子供を失って、自分も命を絶とうとした時に光が差し込んできて、その主人公はその光の導く方へと歩いて行くんだけど、果たしてどうなっていくのか？を描きました。でも、私はそういう切ない歌詞を書けるかな？と不安で仕方なくて、実際に子供もいないので、どうしたものかなと思っていたら、ある人から「人が挫折したり、悲しんだ時はたいがい地面に近い場所にいる」ということを聞いたんですね。「あぁー、負けた」と言って頭を抱える時に、絶対地面に近くなるじゃないですか。そういう原理を利用してみようと思って、寝ながら書いたんですよ。お腹の上に紙を一枚置いて、ペンを持って夜眠るんですよ。そうすると手が勝手に動くんですよ。それで朝見るのが怖いんです。本当にマイナスな事しか書いてないんですね。「枯れ果てる」「もう会えない」とか、誰が書いたんだろう？って思う位。私は基本的にポジティブ思考なので、そんなこと考えたこともなかったんですけど。だから「シチリアーナ」は、何かある種の個性を持った曲になったと思うし。良かったら是非試してみて下さい。心の奥底が見えると思いますよ。

――この3年間で、歌詞のテーマや書き方が色々と変わってきましたか？

平原：変わりましたね。苦手だと思っていたからこそ、思いついた案かもしれない。だから人は誰でも「きっと出来ない」と思っていることや、苦手なものがあると思うけれど、自分が決めつけなければ、きっと乗り越えられると思うんですね。自分は身をもって体験できたから、皆に「絶対頑張ればできるんだよ！」と証明することにもなったと思うんですね。ファンの人しか分からないかもしれないけど、私がずーっと「書けないんです」とか言ってたのに、最近詞ばかり書いてることは、「克服したんだな」ということだと思うので。

――「曲はすらすら書けるけど、詞がなかなか書けなくてね」と話される方は多いですけど、それが逆になったのはスゴイことですね。

平原：怖いですね。曲のネタが切れたのかもしれませんけど。

――それは単純に時間的余裕がないだけかと。

平原：そう、時間がね…無いんですね。歌詞だったら飛行機の上でも書けるんですよ。逆に、空の上で書けるということは素敵なことで、色んな言葉が上がってくるんですよ。歌詞は今は書きやすい状況になりますよね。テーマも「そら」だし（笑）。

――3月に大学を卒業された後は、より音楽に集中できる環境になると思いますが、今から思う所はありますか？

平原：なんて自由なんだろう。金、土、日でツアーを回らなくていいんですよ。すごいことだと思いませんか？

――確かに（笑）。

平原：私もう幸せで。学校を優先してスケジュールを組んでもらっているので、金、土、日あって、日曜泊まりだと空港からそのまま学校に行って。それの繰り返しだったから、やっぱり体調も崩しましたし。友達がいたから頑張れたし、家族がいたからここまで生きてこれたんですけど、そういう大変なこともなくなるし、ゆったりとした気持ちで平原綾香をフル活動というのは初めてなんですよね。

――今までツアーで全国に行かれたと思うんですけど、各地で街中を歩いたり出来なかったんですか？

平原：一人でコソっと抜け出してショッピングに行ったことはあるんですけど（笑）。社会人になれば、堂々と胸を張って遊べます。

――大学卒業後、4月から全国ツアーが控えてますが、どんなツアーにしてみたいですか？

平原：きっと全てを開放した、本当に「そら」みたいなツアーが出来るんじゃないかなと思ってます。今はまだ打ち合わせの段階なんですけれど、やっぱり舞台とかもシンプルなものにすることによって、どんな「そら」にも色付け出来ると思うんです。「シチリアーナ」は雷が落ちてて、なおかつ雨が降っているというイメージなんですけれども、そういうのもきっとステージがシンプルだったらいいなと思うし。あとはきっと自分の動きも関係してくると思っていて、私が歌を始めようと思ったきっかけも学校でやったミュージカルなんですね。だから少しミュージカルっぽいような動きを含めたら、また新しい物が出来るんじゃないかなと思っています。

――では最後に、昨年のテーマは「猪突猛進」でしたが。

平原：ちょっと先取りしすぎました。

――ですね。今年は猪年ですがどうしましょう？

平原：なので、続・猪突猛進、アジアです（笑）。

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