1889(明治22)年の衆議院議員選挙法は、15円以上という当時としては高額の納税要件で制限を課している。その後、納税要件は10円以上、3円以上と段階的に引き下げられ、1925(大正14)年には普通選挙法で撤廃。第2次世界大戦後の45(昭和20)年に行われた衆院選挙法改正で、「20歳以上」に引き下げられ、女性の参政権も保障された。50(昭和25)年には衆院選挙法が廃止、現行の公職選挙法が制定された。

 「清新溌剌(はつらつ)、純真熱烈ナル青年有権者ノ選挙ヘノ参加ニ依リマシテ、選挙界ノ固著セル弊竇(へいとう)ヲ一新シ、之ニ新日本建設ノ新シキ政治力ヲ形成スル重要ナル要素ヲ加ヘルコトニ相成ルモノト信ジテ居ル次第デアリマス」

 終戦直後の帝国議会で、選挙権年齢の引き下げを婦人参政権と並ぶ「最重要課題」として掲げた幣原喜重郎内閣の堀切善次郎内務大臣は、若者の政治参加の必要性をこう宣言している。その後の吉田茂内閣の大村清一内務大臣は、「経験不足ではないか」などとの懸念に、今後の学校教育や社会活動で選挙権の行使能力を養うとの趣旨の答弁を行った。

18歳選挙権は「世界の常識」

 今回の引き下げ論議は、少子高齢化や財政赤字、地球温暖化など世代を超えた課題解決のために、ツケを背負いかねない未来の「当事者」である若者の意見を政治に反映させよう、というもの。「成人=20歳」といっても、実際には18歳にもなれば結婚できる(女子は16歳以上)し、競馬やパチンコなどの成人向けの遊びや深夜営業店舗への入店もできるようになる。環境や福祉、まちづくりなどのボランティア活動に、若者の参加が増えてきている状況も「推進派」の追い風になっているようだ。「平成の大合併」をめぐる住民投票の際には、多くの自治体で「18歳以上」に投票が認められた。

 一方、18歳選挙権は、「世界の常識」でもある。世界186カ国のうち162カ国、サミット参加8カ国では日本以外の7カ国で導入済み。日本では「若いからまだ早い」と言われてしまいがちな引き下げ論議も、海外では若者は早くから政治に参加することで成熟し、次世代の担い手育成につながるという考え方が背景にあるようだ。さらに、ドイツでは未成年の16歳にも選挙権を認める州や、英国では16歳引き下げを政権公約に掲げる政党も。米国では近年、18歳の首長も相次いで誕生している。

「選挙権年齢=成人年齢」でなくても・・・

 投票年齢を「18歳以上」とする国民投票法が通常国会で成立すれば、法体系の安定性や一元化といった観点から、成人・未成年を扱う法制度の一括引き下げが必要との意見もある。実際に提出される法案では、3年をめどに関連法制を見直す付則が明記され、選挙権年齢引き下げまでは「20歳以上」となる見通し。公選法と同じく成人を「20歳」とする民法や少年法、飲酒や喫煙の規制など、多くの法律が改正の検討対象となるため、「18歳」に対する慎重論は根強い。

 しかし、それぞれの法律は目的や性質が異なるため、理論的には必ずしも一体で引き下げる必要が必ずしもあるわけではない。総務省では、公選法9条を改定するだけで選挙権年齢引き下げるが可能との見解を持つ。また、NPO「ライツ」は、憲法は成人の選挙権を保障すると規定しているだけで、未成年者への選挙権を妨げてはいないとも主張している。海外では、選挙権年齢だけを引き下げ、後に成人年齢を変えたというドイツの例もある。【了】

■関連リンク
NPO法人 Rights
『16歳選挙権の実現を!』(livedoor ブックス)