京セラは、これまで測定が困難であった、極小物体の距離と大きさを計測することができる「AI測距カメラ」を開発した。
●1mmの物体、透明・反射物体でも計測可能
世界の労働力不足は、先進国を中心に多くの国で共通する社会課題となっており、特に日本の総人口に占める65歳以上の割合は世界で最も高いと言われ、労働力不足を補うため、一層の生産性向上が求められている。
その解決策の一つとして、現在、生産現場の自動化が進んでおり、人間の目の代わりとなり物体認識ができる高度なビジョン・センシング技術が求められるようになった。
京セラが開発したAI測距カメラは、極小物体の距離と大きさを計測することができるステレオカメラ。
対象物体からカメラまでの距離10cmで計測誤差0.1mmと高精度な距離測定を実現することで、大きさ1mm程度の極小サイズの物体や、従来のステレオカメラでは対応が困難であった透明物体・反射物体の正確な距離計測ができ、製造現場や高度な物体識別を必要とする現場において、人の目に代わり選別、判別することが可能となる。
●AI測距カメラの特長
●1:超近距離センシングを可能とする、独自のステレオカメラ構成
一つのセンサーに二つのレンズを搭載した独自のステレオカメラ構成を採用することにより、従来のステレオカメラでは不可能な超近距離センシングを可能とした。
二つのレンズ間の距離を極めて狭めた(超狭基線長)ステレオカメラの構成を採用。左右の視点の違いによる視差を従来よりも近距離で検知することができるため、極小物体の大きさを正確に計測することができる。
●AIステレオビジョンアルゴリズムの採用により、単眼距離計測比10倍の高精度を実現
AIのステレオビジョンアルゴリズムを採用し、高精度な距離計測を実現。
高精度な距離計測を実現するためには大量の学習データと膨大な学習時間が必要となりますが、京セラは学習コストを低減するために、以下の二つの技術に取り組んだ。
1:データ収集コストを低減するためのCGによる学習データ生成技術
2:正解データを必要としない事前学習技術
特に、二つ目の正解データを必要としない事前学習技術については、中部大学 藤吉教授との共同開発により最先端のAI技術を導入し、独自に改良を図った。
今回、これらの技術をステレオビジョンアルゴリズムに適用することで、極小物体の計測精度が向上するとともに、従来では距離計測することが困難な透明物体や反射物体についても対応が可能となった。これにより、従来の単眼距離計測に比べ、10倍の高精度を実現する。
なお、正解データを必要としない事前学習技術については、新規性および有効性が国際的に認められ、コンピュータビジョン領域におけるトップクラス・カンファレンス(本会議の採択率は25.9%)である国際会議BMVC 2024 (The 35th British Machine Vision Conference)にて採択された。
●今後の展開
今後は、工場や製造工程で同じ部品の中から特定の極小サイズの部品を選別するロボットへの活用や、医療現場における高精細な人体の計測手術器具などの金属光沢がある物体の認識のほか、物流や小売り現場での搬送ロボットへの活用など、幅広い分野での活用を通じて、社会全体の労働力不足解消に技術で貢献していきたいとしている。
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