認知症初期の診断を受けた82歳のハンさん。
記憶があやふやで苦労しているが、8カ月前に自分に起こった出来事を忘れることができず、苦痛を感じ続けている。
今年2月23日、ハンさんが入院していた慶州(キョンジュ)乾川邑(コンチョンウプ)の新慶州療養病院。2日前に新型コロナの陽性判定を受けたハンさんが病室から病棟の廊下に出たところ、病院の管理部長であるA氏がハンさんを見るや否や、威嚇してハンさんを突き飛ばした。
ハンさんは一瞬で倒れ込んだ。
「私は話をしようとしただけなのに…」と、ハンさんは記者に当時の状況をたどたどしく語った。「部長が私を押し倒して、股関節が…壊れてしまって、手術を受けたんですよ」。そのときのことを思い出すと心臓が締めつけられて、言葉が出ないと嘆いた。
ハンさんは右大腿骨頸部が骨折し、手術を受け、8週間の治療を受けた。
慶尚北道の老人保護専門機関は事件を受理し、およそ3カ月の調査を行った後、老人虐待と認定した。
老人施設虐待事例判定書には「入院患者の医療・介護を担当する病院として適切な措置でなかったと判断され、CCTV映像および証拠資料、証言を基に老人福祉法第1条の2と老人福祉生活施設虐待判定指標に基づき、身体的、情緒的な虐待と判定する」と記録された。
療養病院のA部長は「コロナにかかったお年寄りが自分に向かってきたので、無意識に防御のために突き飛ばした」と語った。また、「お年寄りとはこれまで親しかった」と言葉を濁した。
新慶州療養病院に立場を尋ねたところ、「(財団の)理事に報告してお答えする」とのことだったが、連絡は来なかった。
取材陣は療養病院を運営する医療法人にも問い合わせた。財団関係者は「記事を誤って書いたら責任を問う」と述べた。トンオ医療財団は新慶州療養病院のほか、慶尚北道でトウム病院やトンオ療養院なども運営している。
(記事提供=時事ジャーナル)