[画像] 上司に「お前は使えない」と言われて退職を決意しました…これって「会社都合」になりますよね?【社労士が解説】

IT企業でプログラマーとして働くAさんは、成果を生み出すことができず苦しんでいました。元々彼は営業希望で入社したのですが、配属されたのは開発部門で慣れないパソコンの前に座り、日々プログラムと向き合っています。

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学生時代からパソコンに触れていた同期は次々に成果を出していきますが、Aさんはなかなか上達しません。与えられた仕事の納期も守れず、遅くまで働いて作ったプログラムもバグが多く使い物にならないのです。最初は優しく見守っていた上司も、上達しないAさんを見て「お前は使えない」と口にしてしまうのです。

慣れない仕事と向き合ってなんとかやってきましたが、上司から「使えない」と言われたことでAさんは退職を決意します。上司に「使えない」と言われたのだからAさんは会社都合での退職を希望していますが、問題ないでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに詳しく聞きました。

ーAさんは会社都合で退職できますか?

結論から言うと、会社都合で退職するのは難しいでしょう。会社都合での退職が認められるには、「解雇」や「倒産」といった会社側の都合である必要があります。会社側から自発的な退職を促される「退職勧奨」に応じた場合も、会社都合の退職として取り扱われます。

Aさんのケースでいうと、まず解雇と倒産は当てはまりません。したがって退職勧奨にあたるかどうかがポイントです。Aさんの退職のきっかけは上司からの「お前は使えない」のひとことなので、これだけで退職勧奨とは認められません。よってAさんは会社都合での退職にはならないのです。

ー会社都合で退職するメリットはあるのですか?

退職する側のメリットとしては、失業保険がすぐに支払われることでしょう。自己都合の場合は2カ月間の待機期間があり、その間に給付は受け取れません。会社都合の場合はその待機期間は短く、1週間程度で受け取れます。また給付期間が自己都合よりも会社都合の方が長いため、総額が会社都合の方が多くなります。

ただメリットばかりではありません。次の仕事を探す活動において、面接などで会社を辞めた理由を問われた場合、会社都合であると伝えるとマイナスの印象を持たれてしまう場合があります。解雇や退職勧奨だった場合、本人に何かしらの問題があったのではと思われても仕方ありません。

黙っていたとしても企業がバックグラウンドサービスを利用して履歴書の裏付けを取った場合、そこから事情が明らかになる場合もあります。

よって失業保険が多く貰えるからという理由だけで、会社都合での退職にこだわるのは得策ではないと考えます。

◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)