衆院選に東京15区から出馬し、比例で復活当選を果たした自民党の大空幸星氏(25歳)の発言が波紋を広げています。
 
◆「立場が違うから」「じゃあ、帰りましょうか」出演番組がヒートアップ

 10月28日放送の『ABEMA Prime』に出演した際に、「政治に対して一方的に批判していたが、コメンテーターの仕事に限界を感じた。個人としてコメンテーター人生が嫌になった」と語ると、共演者が一斉に反発する場面があったのです。

 そのリアクションに対して、「(政治家とコメンテーターとでは)立場が違うから。僕の考えるコメンテーターは、どこにも言えることをフワッと言っている。僕は、それを壊していくことだった。でも、コメンテーターでは(社会を)変えられない」と大空氏が反論しました。

 すると、番組はさらにヒートアップ。だったらなぜいまこの番組に大空氏が出演しているのか、と問いただされると、「じゃあ、帰りましょうか」と、売り言葉に買い言葉といった事態に発展したのです。

◆「こんな人間」「平然と開き直るところに驚いた」東国原氏、泉房穂氏から選挙中に疑問の声

 選挙中から大空氏の発言には疑問符がつけられていました。候補者による公開討論で夫婦別姓や同性婚について問われると、「イシュー化することによって進められない問題もある」と煙に巻き、曖昧(あいまい)な態度に終始しました。

 一連の発言に、東国原英夫氏は自身のX上で「まぁ、こんな人間だったのかな。自民党化が進むのかな。」とポスト。泉房穂氏も同じくX上で「いきなり自民党から出馬したことにも驚いたが、夫婦別姓や同性婚の問題に誠実に回答せず、平然と開き直るところにさらに驚いた」とつづりました。

 こうして怒りよりも驚きや呆れをもたらすほどに豹変(ひょうへん)してしまった大空氏。そもそもどんな人だったのか、経歴をおさらいしておきましょう。

 大学在学中に24時間利用可能なチャット相談窓口を運営するNPO法人「あなたのいばしょ」を設立。孤独対策に取り組む内閣府の検討会の委員に任命されたことで、次第にメディア露出を増やしていきます。

 民放各局のニュース、情報番組で軒並(のきな)みコメンテーターを務めると、若い世代と弱者の声を伝えるオピニオンリーダー的な立ち位置を確立しました。

 時の政権には批判的なスタンスで、弱者に対する視線を欠いた無策を嘆いてきました。2020年に安倍晋三首相(当時)が退陣を表明したときには、「若者世代の命を軽んじる政治が続いてきた」と糾弾し、明らかに自民党的な政治に対して距離を取っていたのです。

◆「自民党じゃないとできない」変わりっぷりに驚き

 そうした背景があるからこそ、大空氏を知る人はその変わりっぷりに驚いたのでしょう。

 選挙期間中に雑誌『AERA』の取材を受けた際には、「野党と一緒に孤独対策をやってきても一緒に仕事ができなかった。つまり、何もやってくれなかったんですよ。(中略)僕は本当にそこで野党に失望しました。自民党じゃないとできないと思いました。困った人に手を差し伸べるのが真の保守政治だと思います」とまで言い切っていたのだから恐れ入ります。

 いずれにせよ、大空氏は自民党所属の国会議員になりました。東国原氏も言うように、今後はそのような思想や発言の変化も踏まえ、有権者が審判を下していくようになるのでしょう。

 こうして批判にさらされている大空氏の発言ですが、では具体的に何が問題だったのでしょうか? 改めて彼のコメントのロジックを見ていきたいと思います。

◆自分の話を、政策実務の難しさにすりかえ

 まず、大空氏が政治家とコメンテーターとでは立場が違う、よって表現の仕方やアプローチが変わるのも仕方ない、と語ったこと。それ自体は正しいし、率直な感想であると思われます。