「私は鈍感なので全く考えていなかったんですが、自分は料理や買い出しをしてくれるメイドみたいな存在として誘われたんだと思いました。役割を与えたら黙々とやるし、文句も言わない。BBQの小間使いとして適役だったんだと思います。そんなことを考えていたら無性に虚しくなって、カフェでボロボロと泣いてしまいました」
週明けの勤務。誰もSNSの誤爆について触れることはなく、営業メンバーはいつもと変わらない様子だった。
「同僚に対する不信感が拭えなくて、どうしても確認したいことがあったので、本部に連絡してみることにしました。お客さんからの問い合わせを受けて、私が提案をして、それが元で営業メンバーが商談して成約につながった場合は成果が按分される仕組みがあるんです。私は何件もそうしたアシストを行っていたんですが、本部に確認してみたところ、案の定、私には成果がいっさい按分されていないことがわかったんです」
◆正社員に利用されていたことに気づく
営業が作成する受注書類に記載されていなければ按分は発生しない。意図的に行われていたようだった。
「上司からは面談で成約のアシストについて口頭で評価を受けていました。ですが、数字上は反映されていないので、いくらがんばったところで昇給などは見込めない状況だったんです。仲間だと思っていたのは私だけで、彼らはそういう体裁だけ装って、ずっと私を利用してきたんだと思いました。契約社員である私と正社員である彼らとの間には明確な線引きがあったんです」
大きなショックを受けた井原さんは転職を考えるようになったが、それでも最後まで勤務は続けた。
「契約期間は全うしようと思い、半年ほど残っていた期間は最後まで勤務を続けることにしたんです。それで、更新の意思確認をされた時にお断りしました。同僚に『お別れ会をやろう』と持ちかけられましたが、丁重に辞退しました」
井原さんが転職した先は、その会社の競合で業界シェア上位の企業だった。仕事をがんばることで、前職企業のシェアを奪うことにやりがいを感じているのだという。
<TEXT/和泉太郎>
【和泉太郎】
込み入った話や怖い体験談を収集しているサラリーマンライター。趣味はドキュメンタリー番組を観ることと仏像フィギュア集め
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