さらに、他の従業員も「ナメクジ1匹を見たことはあったものの、大量発生していることはなかった」と供述していることから、店長の供述は整合していると評価した。

◆被告人の証拠写真についての供述は「信用できない」

 一方、これまでの公判で、被告人は「2022年7月12日に被害店舗の冷蔵庫の隙間にナメクジが5、6匹いたのを見た」、「その日以降も5、6匹のナメクジがいるのを複数回見た」などと当時を振り返っている。

 特に被告人質問では、投稿当時に話題になった証拠写真について細かく問われていた。その投稿とは、店長と被告人とのLINEのやりとりをスクリーンショットしたもの。LINEには、「ナメクジ超大量発生してます」の文言とともに、証拠写真が送信されている。

 当時、冷蔵庫の隙間にナメクジが5・6匹いたという。ただし、写真からはナメクジらしきものが1匹確認できるだけ。それでも、被告人は「ナメクジの処分を急ぎすぎた結果、よく確認していなかった」と供述。

 だが、須田裁判官は「被告人の供述は信用できない」としたうえで、「大量のナメクジが発生していたという事実はなかった」と断じた。

「被告人は、大量にいる衝撃で、(略)写真をよく確認していなかったためなどと供述しているが、納得できる説明とは言い難い」(判決から)

◆裁判官が「懲役1年の実刑判決」に処した理由

 さらに、須田裁判官は懲役1年の実刑判決に処した量刑の理由について次のように認定した。

「被告人は、不特定多数の者が閲覧するSNS上で、被害店舗の衛生環境に関して大きく誇張した内容等を投稿したり、店長に対して差別的・侮辱的な内容を投稿したりすることをくり返しているのであって、犯行態様は相当に悪質である」

 他にも、勤務環境や店長への不満から会社へ復讐しようとしたとされる動機について、「本件は公益通報を目的とした事案ではなく、被害店舗内でナメクジが目撃されたことがあったこと自体は事実であることを考慮しても、本件犯行動機及び経緯に酌むべき事情があるとは言い難い」とした。

 被告人は、判決を読み上げている須田裁判官の方を微動だにせず、まっすぐと見つめている。最後に、須田裁判官から「判決の内容はわかりましたか」と問われ、被告人は大きな声ではっきりと「はい」と一言答え、閉廷した。

◆控訴はせず、裁判は決着へ

 閉廷後、弁護人は報道陣の取材に対して、「求刑の懲役1年6か月からは、ばっさりと切っていただけたという印象です。帰り際に、圓谷さんに声をかけたところ『控訴はしない』と言っていました」と語った。

 一時、世間を賑わせた“告発投稿”は、懲役1年の実刑判決で決着がついた。

取材・文/学生傍聴人

【学生傍聴人】
2002年生まれ、都内某私立大に在籍中の現役学生。趣味は御神輿を担ぐこと。高校生の頃から裁判傍聴にハマり、傍聴歴6年、傍聴総数900件以上。有名事件から万引き事件、民事裁判など幅広く傍聴する雑食系マニア。その他、裁判記録の閲覧や行政文書の開示請求も行っている。