ホリデープロモーションは、知る人ぞ知る「祭」。クリスマスの期間のこと。スターバックスの1年で、いちばん盛り上がるプロモーションだ。期間限定で発売されるドリンクやフードの数もアイテムも、控えめにいって狂っている。一発で覚え切れない情報量を前に仲間は毎日学習を重ねて覚えていた。私は覚え切れないからカンペを作っていた。毎年暑いうちから情報解禁されているのに。

 ちなみに、退職してから気づいたのだが、お客さんとして参戦するホリデープロモーションは素晴らしく隅々まで煌びやかで楽しい。そして、あの舞台裏の努力があってのホリデーだと思うと感慨深い。

 このように常に学習が必要なところを「キツい」と言われている可能性がある。そして、それと同時に求められる接客レベルも高いために、労働意欲が高い人でないと「キツい」と感じるのかもしれない。

◆オシャレなバイトだと思っているとキツい?

 スタバのバイトがキツイと言われる具体的な理由として、前述のような「覚えることがたくさんある」の他に、求められる接客レベルが高いという点がある。しかし、スターバックスには接客のマニュアルがない。

 入社するとすぐ待っているのが、1〜2か月かけての研修なのだが、まずはスターバックスのミッションと称し、スターバックスのあるべき姿やこれから目指すべき姿をスタッフ全員の共通認識としてインプットする。これは、他の企業でいう「理念」に近い。

 そして、同じ方向性を掴んだら、お客様に対して自分はどのように行動すべきか自発的に考える。このパターンはこう動く、このシーンではこう声をかける、というような細かなルールはない。接客は研修で具体的に教わらず、先輩からアドバイスをもらったり実践で学んでいくのだ。

 そして、自分で考えて動いた結果お客様に喜ばれると、強烈な喜びとやりがいを得られる。このあたりを経験し始めると、時給と仕事のバランスなんてものはどうでもよくなる。そして、時給がどうでもよくなると、やりがいを求めて仕事にハマっていくのだ。

 次々と学習と暗記に迫られながらも、お客様に喜んでもらえる接客を自分なりに考え心がける。この自主性が問われる部分が「キツい」だとしたら、働くのを考え直したほうがいい。ブランドイメージに憧れを抱いて入社する人もたくさんいるが、それだけで何年も続いている人はごく稀だ。

 スターバックスの多くのスタッフが自主性の奥にあるやりがいを感じて働いているのは確かである。

<TEXT/阪口ゆうこ>

【阪口ゆうこ】
1981年生まれ。整えアドバイザー。片付けや整えについてのブログ「HOME by REFRESHERS」を運営。コラムなどの執筆、セミナー開催を行う。著書に『ゆるミニマルのススメ』などがある。好きなものはビール、宴会、発信すること。嫌いなものは戦争、口内炎、マラソン。Instagram:@sakaguchiyuko___