浦和レッズにとって、10月23日に行なわれたホームでの柏レイソル戦(1−0)は、図らずもシーズンを左右する重要な試合となった。

 ペア・マティアス・ヘグモ監督から昨シーズンの浦和を率いたマチェイ・スコルジャ監督に交代してから、初戦のガンバ大阪戦こそ徹底した堅守で1−0の勝利を飾ったものの、その後は4連敗を喫した。

 4−3−3をベースに攻撃的なスタイルを打ち出したヘグモ監督も、最後の方は守備のバランスを取り入れるようになってはいたが、攻撃的なスタイルに守備のバランスを入れるヘグモ監督と、堅守をベースに攻撃を組み上げていくスコルジャ監督では、本質的な哲学が異なる。

 スコルジャ監督の再任にあたって、おそらく強化部からのオーダーに守備面の改善があり、G大阪戦で見せたような転換が、選手たちの意識的なギャップを生んでしまったと考えられる。

 戦術が迷子になると言ったら大袈裟かもしれないが、ここ数試合は攻撃面の停滞感が出ており、守備に関してもボールを奪うより、まず失点しないことにベクトルが向きすぎていた。

 その際たる現象が東京ヴェルディ戦(1−2)だ。スコルジャ監督が得意とする守備面でも、東京Vのビルドアップに振り回されて、自陣に引きこもる時間が長くなり、逆転負けに繋がってしまった。この時点で勝点39だった浦和の危機感を誘発したのが、降格圏の前後にいるチームが揃って勝点3を獲得したことだ。

 後半戦で浮上してきた京都サンガF.C.が最下位のサガン鳥栖に勝利して、鳥栖の降格は確定したが、京都は勝点を41に伸ばした。そして湘南ベルマーレは首位のサンフレッチェ広島を相手に、後半アディショナルタイムに田中聡が劇的な逆転ゴールを決めて、2−1で勝利。京都と同じ勝点41になり、浦和を追い抜いた。

 そして現在18位のジュビロ磐田が、アウェーでセレッソ大阪に2−1の勝利。最後はPKを守護神の川島永嗣がストップするという、波に乗るには最高の形で勝点を35とした。
 
 浦和は東京V戦から柏戦まで中3日という短い準備期間だったが、FWチアゴ・サンタナの発案で、21日の練習前に約1時間の選手ミーティングを開き、それぞれが今、思っていることをぶつけ合ったという。

 厳しい状況であることはチームの共通認識であっても、選手が持っている問題意識はそれぞれだ。降格危機の現状を乗り越えるために“とにかく今は結果”という選手もいれば、渡邊凌磨のように、まず個人が特長を発揮できていない現状を問題視する考えもある。

 渡邊は「選手ミーティングをしてチームワークが深まったとかじゃなくて、選手一人ひとりが感化されただけだと僕は思う」と語る。まずは思っていることを主張して、仲間に認識してもらう。その一つが、どうしても一人ひとりが本来の特長をピッチ上で発揮できていないことだ。

「この間のような試合が最低限できれば、そこからコンビネーションプレーとかになっていくのかなと、試合をやりながら思いました」と渡邊が語るように、柏戦は結果に向き合いながらも、そのために一人ひとりが自分の特長を出すというところは、東京V戦より引き上がったことは明らかだった。

「まだ個人個人の力が引き出されない感じで、不完全燃焼で90分を終えることって、めちゃめちゃ今シーズンはあったと思うので。それをなくしながら、最後にチームとしてこうしていくべきだよねっていう会話ができれば、良い位置にいられるんじゃないかなって」

 柏戦は後半アディショナルタイムのPKで勝利という辛勝ではあったが、ミーティングで選手たちが発信した今の浦和、これからの浦和に求められるもの、その芽がところどころに見えるような試合だったことも確かだ。