清水エスパルスはクラブパートナーであるGlicoグループ協賛のもと、2014年よりU14チームを対象とした海外遠征『Glicoチャレンジツアー』を実施しています。
通算8回目となる今回の舞台は、バルセロナ(スペイン)。期間中に開催される『Glico CUP』には、FCバルセロナやレアル・マドリードCFなどスペイン国内の強豪チームのほか、ベルギーのKRCゲンクやサウジアラビア代表チームが参加しました。
今回の遠征には、かつて選手そして監督としてもエスパルスに在籍した平岡宏章(ひらおか・ひろあき)アカデミーヘッドオブコーチングも帯同。世界的強豪クラブとの試合や現地のサッカー文化に触れた10日間を振り返り「有意義な時間だった」と語ります。
2019年にはホームグロウン制度が導入されるなど、選手育成の重要度が増しているJリーグ。クラブと企業が連携して実施された『Glicoチャレンジツアー』が持つ意義を聞きました。
「すべての経験が成長の糧になる」スペインで選手そして指導者が学んだこと
ーはじめに、今回の『Glicoチャレンジツアー』を通しての所感をお伺いしてもよろしいでしょうか?
平岡:私自身初めて帯同しましたが、スペインの観衆がつくりあげる会場の独特な雰囲気や現地のサッカー文化を肌で感じることができました。今回で8回目になりますが、あらためてグリコ様のサポートに感謝したいと思っています。
異文化に触れながら視野を広げていくことは、多感な時期を過ごす選手たちの人間的な成長にも繋がったと思います。すべての経験が成長の糧になりますので、帰国してからも今後の日常に活かしていくように伝えています。
ーツアー期間中には『Glico CUP』が開催され、レアル・マドリードをはじめとした海外クラブとの試合もありました。
平岡:今回はレアル・マドリードCFやFCバルセロナ、RCDマヨルカなどといったスペインのチームだけでなく、ベルギーのKRCゲンク、サウジアラビア代表にも参加していただきました。各チームが特色を発揮して切磋琢磨しながら成長することができたと感じています。
やはりヨーロッパクラブの選手たちのプレーを見ていると、「将来トップチームで活躍するのだろうな」と容易に想像することのできる選手が多くいましたね。インテンシティやコンタクトスキルなどサッカーの技術はもちろんですが、メンタリティやプロポーション(体格)の部分でも違いを感じました。
一方で、ボール保持者へのサポートや攻撃時のスピードアップのタイミングは我々の明確な強みだと感じることもできました。反町(康治)さんがGMに就任し、育成の現場もアドバイスをいただきながら日々取り組んでいます。今回の遠征を通してその成果が見えたことは良かったですね。
ー指導者の皆さんにとっても意義のある経験になったのではないでしょうか?
平岡:そうですね。特に鈴木(隼人)監督は今回の遠征を通していちばん成長したのではないかと私は感じています。彼自身も選手時代に海外でのプレー経験はありますが、指導者になってからは海外で学ぶ機会が減っていたようです。
先ほど申し上げたようなプレー強度や技術的な部分だけでなく、個人戦術やグループ戦術といったサッカーの原理原則という点でも大きな違いを強く感じているはずです。この経験を今後に活かしてもらえたらなと思っています。
ー指導者をはじめとしたクラブスタッフの方々がヨーロッパのサッカー文化に触れることによって、クラブ全体の発展にも繋がるのではないでしょうか?
平岡:これまでの『Glicoチャレンジツアー』では育成部のスタッフのみが帯同していましたが、今回は教育事業部のスタッフも1名帯同しています。現地での経験を活かして、サッカーに触れる、楽しむというグラスルーツの観点からも裾野を広げる地道な努力をしていきたいと思っています。
※清水エスパルス 教育事業部では、幼稚園児からのサッカー教室をはじめ、中学生年代のSSチームの活動、地域の幼稚園約300園への巡回教室や県内5箇所に構える自前のフットサルコートの開放など、サッカーの裾野を広げる活動に積極的に取り組んでいます。
中学生年代のSSチームの活動
地域の幼稚園への巡回教室
自前フットサルコートの開放
「エスパルスとグリコの関係は、Jリーグの歴史のなかでも特別」
ーこの取り組みを支援しているGlicoグループは、清水エスパルスを創設当時からサポートしています。歴史のある両者の繋がりをどのように感じていらっしゃいますか?
平岡:エスパルスとグリコさんの関係は、私が選手だった時代から続いています。この長く強固なパートナーシップは、Jリーグの歴史のなかでも非常に特別なものだと思っています。
アカデミーへのサポートとしては、10年以上にわたってプロテインを提供していただいていますし、過去には食事バランスを指導してくださったこともありました。
ートップチームのユニフォームスポンサーとしての印象が強いですが、これまでも育成年代への継続したサポートがあったのですね。こうした取り組みを通じては、未来を担う世代に向けた期待を強く感じます。
平岡:近年は10代からヨーロッパのビッグクラブで活躍する選手も多くいますし、日本国内でも20代前半から海外挑戦を決断する選手も増えています。このような流れがあるなかで、U14の選手がスペインを代表するチームと試合ができることは、本当に大きな意味があると思います。
将来的には『Glicoチャレンジツアー』をきっかけにトップチームへ昇格し、日本代表で活躍する選手が現れることも期待しています。エスパルスのブランド価値も上がっていくと思いますし、それがサポートしてくれた企業へ利益を還元することに繋がると考えています。
ー2019年からはホームグロウン制度も導入され、クラブの選手育成に対する考え方も変化してきたと思います。育成組織の体制を整えることの重要性については、平岡さん自身どのように考えていらっしゃいますか?
平岡:2点あると思っています。1つは、実力のある選手をアカデミーからトップチームに昇格させることで、長期的なクラブの強化に繋がるということ。もう一つは、地域の盛り上がりです。清水のような小さな街において、地元出身選手の活躍は大きな影響があると思います。
今シーズンキャプテンを務めている北川航也、そして宮本航汰、西澤健太と同年代の3人が活躍していますが、その下に続く選手がなかなか現れていない現状があります。やはりトップチームに昇格するだけでなく、Jリーグで活躍して世界に羽ばたく選手を育てるために何が必要なのかを考えなければいけません。
ー駅前やクラブハウスまでの道中でも、エスパルスのエンブレムをたくさん目にしました。サッカー王国としての歴史があるなかで、清水=サッカーという印象が強く根付いているのではないでしょうか?
平岡:私自身も清水で生まれ育ち、サッカー人生のほとんどをエスパルスで過ごした人間です。この遠征で目にしたスペインのようなサッカー文化が根付いた光景を生み出せるのは清水だけだと思っています。
一方で、最近は少子化やサッカー以外のスポーツの台頭もあり、サッカー人口が減っていることは残念に思います。そんな現状を変えるために、まずはエスパルスがJ1で優勝争いをするチームになることが必要。そのためにアカデミーもより良い選手を育成し、トップチームで活躍できる選手を輩出する組織にしていけたらと思っています。
ートップチームの強化のためにもアカデミーの組織づくりが重要になっていきますね。あらためて今回の『Glicoチャレンジツアー』は大切な意味を持つと感じます。
平岡:今回の『Glicoチャレンジツアー』では、選手、指導者ともに本当に有意義な経験をさせていただきました。育成組織に所属するすべての年代でこういった機会を設けることができればと思いますし、その環境を目指していきたいと思います。
そのためにも、今回参加したスタッフが現地での経験をクラブ全体に伝えていく必要があります。日常から意識を変えていけるように、私も伝え続けなければいけません。
■Glico cupの様子はYoutubeチャンネルにてご視聴いただけます。
https://www.youtube.com/@BalonQTV
■Glicoチャレンジツアーの詳細はこちら
https://www.s-pulse.co.jp/news/detail/53617
■江崎グリコ株式会社 スポーツサポートプロジェクトの取り組みについて
https://www.glico.com/jp/csr/sports/