「そんな日に利用する人はいるの?と思われるかもしれませんが、通常時の6割くらいの利用があるんです。傘では間に合わない強さの豪雨のなか、ビーチサンダルを履き、パンツの裾を膝まで折り返して出勤していました」
着替えも持参するため、いつもよりも大荷物になるそうだ。車や交通機関を使って出勤する人は休みになり、ラブホ街に住む近所の人たちが徒歩で出勤することになる。
出勤した前田さんは、「いつもよりも暇」ということはなく、台風や豪雨の際に必要な仕事が待っているという。
◆全身びしょ濡れになりながら…
「道路よりも少し低くなったラブホの1階部分が駐車場なのですが、『泳げるんじゃない?』というくらい水が浸入してきます。その水を排水するのが主な仕事です」
出勤時の格好は排水作業のためでもあるそうだ。駐車場には屋根があるため、出勤時よりはマシな状況だと前田さん。しかし、対応するスタッフたちは“妙なテンション”で水の中にいるという。
「台風の影響はスタッフの情緒までおもしろくしますね(笑)」
“T.M.Revolution”や“B’z”のPVを真似た悪ノリが繰り広げられることもあるが、仕事はきちんと行っている。そして、最終的には全身がびしょ濡れになるそうだ。
「その状態で事務所に戻ると、オーナーの奥さんが待ち構えていることが多いです。『ほら、お風呂入っておいで!』とバスタオルを渡されます」
「お風呂?」と思われるかもしれないが、ここはラブホ。空いている部屋のお風呂を各々が拝借し、そのまま掃除をするという。
「今の雷すごい!」
「わー、終業時が一番の大雨……。さっきお風呂入ったのに帰ったらまたシャワーだな」
と話しながら、いつもはできない在庫管理を行う。
「台風時のラブホ業務も意外に楽しいんです」
<取材・文/資産もとお>
―[ラブホの珍エピソード]―
- 前へ
- 2/2
外部リンク日刊SPA!