若山 前会長はソフトを仕入れて販売する販売商社に徹したいと常に言っていました。自分達で製品をつくるのはリスクが高いという考えがあったのです。

 しかし、先ほどの航空会社が開発したシステムを販売する中で、お客様から新たな要望が出てきていました。私は、その要望を受けて、航空会社に「つくって欲しい」と提案したのですが、「なぜ、あなた方が考えている商品を我々がつくらなければいけないのか」と言われたこともあり、当社でプログラムをつくって、ユーザーニーズを少しでも実現できる商品にしようという取り組みを始めました。そこで初めて、自分達でモノづくりを始めたのです。

 ─ ただ、それは前会長の方針とは違いますね。

 若山 そうです。ですから最初は「社内にモノづくりができる人材がいないじゃないか」とすごく反対されました。しかし、営業を通じて、お客様のニーズを肌で感じていましたから、「これは売れる」と。そこで反対を押し切って、どんどんつくっていった形です。

 ─ 開発の人材はどう確保しましたか。

 若山 最初は協力してくれる会社があり、依頼をしてつくっていましたが、その会社の有能なエンジニアが「あなたと仕事がしたい」と言ってくれました。ただ、そのエンジニアは会社で重要な役割を担っていたこともあり、数年の時間をかけて、当社に入社してもらいました。

 その人と一緒に仕事をしたことで、お客様のニーズとテクノロジーが噛み合い、さらにいい商品ができ始めました。

 そうして開発して主力になったのがIT資産管理ソフトの「AssetView」です。市場ニーズを汲み取って改良を進めたことで、年々業界シェアも高まっています。


IT資産管理、「セールスDX」を強みに

 ─ 今、デジタル化に伴って、企業は情報管理などセキュリティに課題を抱えていますね。

 若山 ええ。当社の「AssetView」は情報漏洩対策に長けたセキュリティ機能を持っています。PCの操作ログを取ることで、社内からの情報漏洩を防ぎます。例えば社員が顧客名簿をUSBメモリにコピーして持ち出して売ってしまうという事例がありますが、こうしたものも防止します。

 情報漏洩によって企業の信頼性に疑義が生じ、業績が悪化するケースがあるということを企業はわかっていますから、大企業、中堅企業問わず、皆さん積極的に対策を取られています。

 ─ セキュリティを提供している企業は多くあると思いますが、その中でハンモックのシステムの強みは?

 若山 重要視しているのは「多層防御」です。1つの防御策だけでなく、二の矢、三の矢と、様々な視点で対策を取ることが本当の意味でセキュリティを強化することになるという考え方です。これが当社の「AssetView」の他社にない特長だと思っています。

 例えば、先程のPCの操作ログにしても、単に情報を取るだけでなく、暗号化しています。また、ウイルス対策ソフトも自社製品として提供しています。

 競合他社は、PCのログを取る、暗号化する、ウイルス対策をするといった機能を協力会社と一緒に提案していますが、我々は1つの商品として多面的な対策を提案できることが強みになっています。大企業だけでなく、対策にそこまで資金をかけられないという中堅企業も含めて導入していただいており、強い競争力につながっています。

 それ以外にも、私が取締役の時代から様々な新規事業を立ち上げてきました。もちろん、うまくいかずにやめた事業もありましたが、その中で今、当社で最も伸びている事業を生み出すことができました。