スマスロの登場で人気回復に成功したパチスロ、スマパチがイマイチ伸び悩んでいるパチンコ。遊技台のスマート化によって明暗が分かれたパチンコ業界で再び大きな動きがあった。
2024年9月、パチンコ・パチスロ共に規則緩和が行われ、これまでにはなかった、完全に新しいゲーム性の機械が作れるようになったのである。
そこで今回は、早ければ2025年の3月頃にはホールデビューする新時代マシンの詳細からヒットの可能性、期待感について、大手チェーンの営業統括部長のA氏に話を聞いた。
◆Aタイプ好きのパチスロファンは必見
パチスロのAタイプマシン限定で搭載が可能となった「ボーナストリガー(以下BT)」。掛けるメダルの枚数によってボーナス確率が変わるという特徴を使うことで、これまでのAタイプにはなかった「高確率状態」を作り出すことが可能となった。
「Aタイプの台は1ゲームを消化する時に1〜3枚掛けを自由に選択できるじゃないですか。従来の機種は1枚掛けより3枚掛けのほうがボーナス確率が高くなっていますが、この『掛ける枚数で確率が変わる』という点を利用しています。例えば、3枚掛けだと300分の1、2枚掛けだと30分の1とかに設定して、通常時は3枚掛けしかできないけど特定のボーナス後は2枚掛けができるようにすることで高確率状態になるという仕組みです」
◆“AT機とAタイプの中間的な存在”はヒットする?
これまでのAタイプにはなかった新たなゲーム性、これがファンに受け入れられれば、スマスロに続きパチスロ人気はさらに盤石なものになるが、はたしてヒットの予感はあるのだろうか。
「どうでしょうね、今の時点ではなんとも言えませんね。“AT機とAタイプの中間的な存在”と言われているので、下手すりゃ中途半端な機械になってしまう可能性はあります。当然ですが、短時間出玉の試験でハジかれないようにしないといけないので、瞬発力は出せません。かといって、今まで1回のボーナスで280枚出ていたのが、140枚で2連チャンだとあまり魅力を感じないですよね。あと、結果的に合成確率が下がってコイン単価が上がっちゃうとお客さんは付かないかもしれません」
まだ第1弾となる機種も発表されていない現時点ではなんとも言えないとのことだが、ファンからすると選択肢が増えることは単純に嬉しいことである。
「例えば、試しで1万円勝負をして、BTを引いて2〜3連させてサクっとヤメるといった短時間勝負がメインのファンには合っていると思います。あと、ゲーム性が若干パチンコに似ているので、パチンコファンが流れてくる可能性があるかもしれませんね」
◆大幅なテコ入れで激変するパチンコ
パチスロに追いつけ追い越せ、と言わんばかりにパチンコも規則緩和を決行。A氏曰く、BTよりもパチンコの変化の方が影響が大きいのではないかと語る。
「今はBTよりもパチンコのほうがザワザワしてるんじゃないですか。今までの機種とガラリと変わりますからね。まず、設定付きの機械で、設定ごとにラウンド振り分けを変えられるようになりました。あと、確変割合から確変転落確率、ST回数も差をつけられます。ST回数で設定差をつける場合、表面上はST100回転にして、内部的には設定6が確変50回転+時短50回転、設定1は確変10回転+時短90回転みたいな感じにするんでしょうね。じゃないと、一発で設定看破されちゃうので(笑)」
◆電サポ中に玉が増える仕様も可能に
これまでの設定付きパチンコで、設定ごとに差が付いていたのは大当り確率のみだっただけに、これは確かに大きな変化と言えるだろう。さらに、大当り確率や確変性能といったスペック面以外の変更点もある。
「これまで電サポ中は玉を増やせなかったですが、増やしてもよくなりました。しかも、大当りよってその増加率も変えられます。例えばですが『この大当り後は150%増えるけど、こっちの大当り後はちょっと減る』みたいな感じにして、トータルで110%までの増加ならOK。従来の小当りラッシュに近いですが、作り方次第ではボーナス後にATに突入するパチスロみたいなゲーム性も作れるんじゃないですかね」
◆ドラスティックな緩和だけに期待できる!?
新たなゲーム性の台を生み出せるとはいえ、検査基準や総量自体は変わらないので、現状の出玉性能以上の機械は作れない。だが、それでも「今回のパチンコの規則緩和によってお客さんの流れが変わるかもしれない」とA氏は言う。
「これまでパチンコはパチスロファンを取り込もうとして、設定付きにしたり、パチスロで言う『天井』みたいな遊タイムを作ってことごとく失敗しています(笑)。でも、さすがにここまで自由度が高くなるとゲーム性が大幅に広がってパチスロっぽい機械も作れそうですよね。そしたらパチスロから流れてくるお客さんが増えるかもしれないので、ちょっと期待はしています」
◆今回の規則緩和を上手に活かせるか?
ファン離れが止まらない昨今のパチンコ業界。一昔前の勢いを取り戻そうと必死に試行錯誤しているわけだが、今回の話を聞いて思ったのが「生き残った数少ないファンをパチンコとパチスロで取り合っているだけになっていないか?」ということ。
規則緩和で自由度が高まり、これまで以上に斬新かつ面白い機械が作れるのは間違いないだろう。だが、それによって新たな高射幸性競争が起こり「さらに新規客や初心者が参入しづらくなる」といった事態だけは避けてほしいところである。
取材・文/サ行桜井
【サ行桜井】
パチンコ雑誌『パチンコ必勝ガイド』『パチンコオリジナル実戦術』の元編集者。四半世紀ほど勤めた会社を退社しフリーランスに。現在は主にパチンコや競輪の記事を執筆している。