サントスガルベは、メンズサイズでも約29mmと小ぶり。ストラップはブレスレットが基本でしたから、サントス100は、巨大ケース&革ベルトという真逆の存在だったといえます。ちなみに、2005年にサントスガルベにも「XL」というそれまで以上に大きなサイズが追加されたのですが、その頃のサントスの中心的存在は「サントス100」になっており、ガルベの存在感は薄かったといえます。

 そしてその後、サントスガルベは「女性向けが中心」というラインナップに変更。2010年代中盤頃までには男性用サイズ(LM)が廃止となり、女性向けのSMといったサイズのみの展開になっていたのです。

 2016年頃の中古相場では、男性用サントスガルベはどういった相場だったかというと、LM自動巻(後期ステンレス W20055D6)が24万円程度、LMクオーツ(W20018D6)が11万円程度といった状態でした。

 2016年時点で、ロレックスなどの人気モデルは、既に「異常な値上がり」という意見が見受けられたといえます。私は、2015年に「腕時計投資のすすめ」という本を出したのですが、その頃書かれたレビューを見ても「高くなりすぎている」とか「今が天井」などと書かれていた様子があったぐらいでした。それぐらい、当時の相場は「高い」という印象だったのです。

 しかし、そういった時期において、サントスガルベはクオーツが11万円程度、自動巻が24万円程度といった相場。これはリーマンショック後の時期(全体的に安価な相場だった頃)とそれほど大きく変わらないといえた水準だったのです。

 ちなみに、2015年時点でロレックス「異常に高い」などといわれていましたが、現在相場は、2015年頃と比べて2倍以上であることを付け加えておきます。(例:エクスプローラー14270 2016年水準:約38万円、現在:約74万円)

◆パテックフィリップノーチラスのような“強い個性”

 サントスガルベは、2016年頃といった時期において、全く値上がりといった印象はなかったのですが、それでも「買う」という人は少なかったといえます。というのも、当時の印象も、1990年代後半同様に「バブル期に流行った時計」という感じだったからでしょう。

 実際、私もその頃までサントスガルベに興味を持てず、良い印象はありませんでした。しかし、そういった印象を抱いていた私は、ふとした時に、サントスガルベには「パテックフィリップノーチラス」のような“強い個性”があると感じたのです。

 この“強い個性”こそ、ある時期には「ダサい」「古臭い」といわれてしまうものの、そののちその“強い個性”がたまらない存在になっていくという変化をするのです。まさに、珍味のような存在で、子どもが食べると「まずい」となる一方、大人が食べると「たまらない」となるような味だといえます。

 私は、この感覚こそが「ノーチラス」と似ていると思い、2016年12月に腕時計投資新聞で「ノーチラスのような可能性を秘めているかも」という記事を執筆。それから私は、サントスガルベに興味を持ったため、知り合いにもサントスガルベを勧めるようになっていきました。

 ただ、その後もしばらくサントスガルベの相場は変化せず。私が「ノーチラスのような可能性を秘めている」と言い出してから4年後の2020年12月になっても同様です。ちなみに、サントスガルベのXLサイズだけは、早い時期から相場が変化しており、2017年まで30万円程度だったのが、2018年なると40万円以上になっていました。

 その一方で、まさにバブル期に流行っていたLMサイズは、相場変化せず。2020年頃になっても、相変わらず自動巻モデルでも25万円前後といった価格で購入可能だったのです。