ブラジル南東部サンパウロ州イジェノーポリスのコンドミニアムで、今年8月6日にエレベーターが5階から突然落下し、1人が死亡、2人が重傷を負った。事故はなぜ起きたのか。今月9日、当時のエレベーター内の映像が公開され、注目を集めた。ブラジルのニュースメディア『G1』などが伝えた。

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8月6日午後0時半頃、コンドミニアムのエレベーターが突然落下し、7日後にアドリアナ・マリア・デ・ヘススさん(Adriana Maria de Jesus、45)が死亡し、63歳と27歳の男性2人が重傷を負った。

同コンドミニアムでドアマンとして勤務しているアドリアナさんの夫ジルデリオ・アウヴェス・ド・サントスさん(Gildélio Alves do Santos)によると、アドリアナさんはこの建物内にある部屋の清掃を11年間任されていたという。その日、アドリアナさんは食料品を持っていたため、ジルデリオさんがエレベーターのドアを開け、彼女を中に入れたそうだ。

ジルデリオさんは事故の後、エレベーター内の監視カメラの映像を確認し「衝撃だった」と明かして、当時のことをこのように振り返った。

「彼女が5階のボタンを押したにもかかわらず、エレベーターは7階まで行ってしまいました。7階で2人の男性が乗り込んできましたが、その時は重量オーバーでもなく、全てが正常でした。ところが彼女が再び5階のボタンを押して、もう少しで5階に到着するという時に、エレベーターはコントロールを失い、急降下したのです。そしてエレベーターの床が壊れ、彼女は体の数か所を骨折しました。」

今月9日、ブラジルのニュース番組『Fala Brasil』が公開した映像では、エレベーターが高速で落下した時、アドリアナさんが両手を上げたまま、後ろ向きに倒れ込む様子が映し出されており、その後、リフト内には白い煙と埃が立ち込めた。

事故直後、アドリアナさんは意識があったが、その後、意識不明に陥った。そして、搬送先の病院で脚と腫れた頭部の緊急手術を受けたものの、13日に亡くなった。また男性2人は骨折し、すでに退院しているが、1人は歩行ができなくなってしまった。

実は事故を起こしたエレベーターは、コンドミニアムが建設されてから60年間、一度も交換されず、義務であるメンテナンスのみが行われていただけだった。

メンテナンスを担当していた「アトラス・シンドラー社」は、事故を受けて「当局の捜査には協力している。これまでにも同コンドミニアムに設備の最新化を複数回勧めていた」とコメントした。

一方、管理会社は「メンテナンスは適切で、我々に直接の責任はない」と述べており、サンパウロ州公安局は現在、不審死および傷害事件として捜査を進めている。

日本では、エレベーターの耐用年数は約20年〜25年と言われており、60年というのは耐用年数を大幅に超えているが、今回の事故を受け、エレベーターの専門家ロドリゴ・サー氏(Rodrigo Sá)は次のように説明した。

「エレベーターの落下事故は稀ですが、月に一度の設備メンテナンスが必要です。一夜にして故障することはありませんが、錆びたり、腐食したりしないよう細心の注意が求められるのです。また、住居用ビルのスチールケーブルは通常20年持ちますが、耐用年数を超えた場合は機器の技術的な更新や、より頑丈な部品への交換が必要です。」

なお、アドリアナさんとジルデリオさんは10代の頃に出会い、6年前に27年ぶりに再会して結婚したそうで、2人は事故直前に休暇から戻ったばかりだった。最愛の人を失ったジルデリオさんは、進まない捜査に苛立ちを隠せない様子で、「私が唯一、望むことは正義なのです」と語った。

ちなみにエレベーター事故と言えば昨年9月、インドネシアの高級リゾートホテルの屋外にある斜行エレベーターが突然落下して渓谷に転落し、ホテルの従業員5人が死亡した。

画像は『ND Mais 「VÍDEO: Mulher morre após queda de elevador em SP e imagem impressiona」(Foto: Reprodução/Google Maps)(Foto: Reprodução/Fala Brasil)』より
(TechinsightJapan編集部 A.C.)