近年、グミの人気が上昇中だ。コンビニエンスストアやスーパーでは売り場は日に日に拡大し、さまざまなお菓子メーカーがしのぎを削って新しいコンセプトの商品を打ち出している。グミの市場は年々大きくなる一方だ。

【画像】キシリッシュガム アクアクールは2023年3月にて終売。現在はキシリッシュグミとして復活している

一方、それと反比例するように市場を縮小しているのがガムだ。ガム市場は2021年にグミ市場に抜かれてしまい、現在も年々下降中。そのような現状のなか、お菓子メーカー大手の株式会社 明治(以下、明治)は、2023年にガム市場から撤退。グミに力を集中することとなった。

今回は明治がガム市場から撤退した理由と、現在取り組んでいるグミ市場での戦略について、明治 カカオマーケティング部 カカオニュービジネスGの福島浩介さんに話を聞いた。

コーラアップ


■明治は市場から撤退!ガムが売れなくなった理由とは

明治がガム市場に参入したのは1967年のこと。当時はチョコをメインに扱っていたが、暑さに弱いチョコは夏の暑さで溶けてしまうこともあり、夏場にも強く年中通して安定的に売れるガムを売り出したのがきっかけだった。

プチガム


そして、1997年にはキシリトール配合ガム「キシリッシュ」を発売。ガムで息をスッキリさせるという、おいしさだけではない新たな付加価値要素をつけたことで瞬く間に大ヒット商品に。習慣的に食べられるガムとして定着することとなった。

【画像】キシリッシュガム アクアクールは2023年3月にて終売。現在はキシリッシュグミとして復活している


しかし、ガムの市場は2007年ごろをピークに縮小傾向になり、2021年にはグミとガムの市場規模が逆転。グミ市場は2022年に781億円に達した一方で、ガム市場は548億円となってしまった。

「ガムの売り上げが次第に落ちた理由には社会の変化が大きいです。食べ終わると吐き出さないといけないガムは、どうしてもゴミになってしまいます。最近ではゴミを捨てる場所もどんどんなくなってきているなか、『吐き出さないといけない』ことの煩わしさがネガティブなイメージになっていったのだと思います」

明治 カカオマーケティング部 カカオニュービジネスGの福島浩介さん


また、2020年より猛威を振るったコロナ禍でガムの需要は激減。テレワークの普及や外出機会の減少、マスクの着用などが重なってガムを食べる場面が少なくなり、売り上げが下落してしまった。明治は2023年3月末でガム事業から撤退し、56年の歴史に幕を下ろした。

■新たに盛り上がるグミ市場。その秘密は「噛み応え」

ガム事業から完全撤退した明治が現在力を注いでいるのが、ここ10年ほどで市場規模が3倍に拡大したグミ市場。形や色、味などのバリエーションが豊かで付加価値がつけやすいグミは、コロナ禍のステイホームの需要に重なり、市場の広がりは一気に加速した。

「グミは手軽に持ち運べますし、食べると気軽にテンションを上げられるお菓子です。友達や家族と分け合ってコミュニケーションを取れることもあり、コロナ禍の閉塞感を紛らわせるのに一役買ったと思います。また、見た目もカラフルなものや形が面白いものも多いので、新しいグミがSNSで拡散されて広まり、新たなユーザーの取り込みやリピートにつながったことも大きいです」」

Poifull


果汁グミ弾力プラスぶどう


1980年に日本初のグミ「コーラアップ」を発売し、グミ業界を牽引してきた明治。現在は子どもだけでなく大人をターゲットにグミの咀嚼を通した健康価値の訴求をメインに行っている。

「噛み応えや硬さを数値化することで、自分の噛む力に合ったものを選んだり、そのときの気分に応じた噛み応えのものを選んだりできる、選択基準にしてもらえるような指標を作り、グミの噛み応えや硬さを楽しめるような取り組みをしています」

果汁グミぶどう


これまでグミといえば子どものお菓子というイメージが強かったが、グミ市場の拡大に伴って大人のユーザーも増加。噛み応えや硬さを訴求した結果、仕事や勉強の合間のリフレッシュ、旅行のお供など、さまざまな場面で食べられるようになった。

「最近の子どもは柔らかいものしか食べないと言われていますが、一方でグミはハードな食感のグミも人気となっています。時代と相反する現象がグミで起こっているのは、すごくおもしろいと思いますね」

■健康への付加価値を…グミのこれからの進化とは?

年を重ねるごとに楽しみ方やレパートリーを増やし、そして硬くなっていくグミ。最近では明治の「コーラアップ」やエナジードリンクグミの「ブーストバイツ」でハード食感グミのラインナップの強化も行っていたり、人気商品の「果汁グミ」がさらに硬くなった「果汁グミ弾力プラス」になったりと、明治のグミシリーズが硬さと噛み応えを追求している。

コーラアップザハード


ラムネアップ


また、競合他社からの商品もさまざまなコンセプトや噛み応えのものが登場し、コンビニエンスストアやスーパーのグミ売り場は活況を見せている。そのようななか、明治のグミは、今後どのような形で進化をしていくのだろうか。

「今後は、噛む以外の健康の要素もフォーカスされるポイントのひとつになると思います。弊社では噛むことで口内環境を整えるキシリッシュを販売しておりましたが、同じようにグミでも健康を訴求できるような商品も開発していきたいと思います」

キシリッシュグミ


また、ガムでは販売終了したキシリッシュが、2023年4月には「キシリッシュグミ」として復活。グミでは珍しいキシリトール入りでスッキリとした味わいで、清涼感とリフレッシュ感を感じられるのがポイントだ。今後も明治は噛むこと+健康を訴求し、さまざまな商品展開をしていくだろう。

最後に、福島さんに今後のグミの展望について伺った。

「噛むことの健康価値といったところはベースにしていきながら、咀嚼によるベネフィットをお客さまにも浸透させていければと思っています。そのうえで、これまでにない新しいコンセプトや、新たな感動を提供できるようなグミを作っていければと思います」

ブーストバイツ フルーツエモーション


2023年度は972億円の市場規模を叩き出したグミ。今後も市場は大きく成長することが見込まれている。各社が新たなグミの発売に力を入れるなか、グミの老舗・明治はどのような戦略で市場を制するのだろうか。今後の動向に注目したい。

取材・文=越前与