愛知県内の自動車盗難認知件数が、愛知県警の調べで全国ワーストになっています。県警はオンラインを通じて直近30日間に3回の注意情報を出しています。

被害上位3モデルのオーナーを中心に防犯対策呼びかける

 愛知県の自動車盗難認知件数が上昇しています。2024年1月〜8月の認知件数は603件。1日平均2.5台が被害にあっているペースです。これは2023年の前年同期比で158件(135.5%)と大きく上回っています。


盗難被害「3大車種」の一つがレクサスLXだ(日本損保協会中部支部の盗難防止ガイドより)。

 愛知県内で1〜8月の月ごとの盗難認知件数を、県警提供のデータで比較してみました。カッコ内は1日平均被害件数です。

・1月 38件/48件(1.2)
・2月 68件/40件(2.4)
・3月 73件/63件(2.4)
・4月 108件/41件(3.6)
・5月 81件63件(2.6)
・6月 57件/73件(1.9)
・7月 91件/55件(2.9)
・8月 87件/62件(2.8)

 前年同月比で被害が少なかったのは1月と6月だけ。そのほかはすべて前年を上回る被害認知件数です。前年を上回る被害の増加に対して、県警は9月に2回、10月にもすでに1回の注意喚起を出しました。

 9月2日〜 8日の1週間で、県内ではランドクルーザー(プラド含む)は5台、アルファードは3台(速報値)の被害届が出ています。1週間で8台の被害について、愛知県警刑事課は次のように話しました。

「我々としてはこの件数を少ないとは評価しておらず、むしろ深刻に捉えている。ランドクルーザー、アルファードの2車種の盗難被害が多発している状況を受け、県民に注意喚起させていただいた」

 盗難被害は特定のモデルに集中しています。直近の10月2日の注意情報によると、9月24日〜29日の1週間の自動車盗難認知件数は、ランドクルーザー4台、アルファード2台、レクサスLX1台(速報値)であるとし、こう注意喚起します。

「現在、県警では前記3車種に乗車されている方を中心に防犯対策を呼びかけています!」

 盗まれやすい上位として、前述の刑事課は次のモデルを上げます。

・ランドクルーザー(プラドを含む)
・プリウス
・アルファード
・レクサスLX
・レクサスRX

 この傾向は2024年も2023年も同じです。

「メーカーの防犯対策は破られる」10万円の懸賞金も

 駐車場所を問わず、被害は広がっています。住宅の駐車場、月ぎめ駐車場、コインパーキング――ここなら安全という場所はない、といえるほどです。

 防止には「セキュリティのアップグレードに加えて警報器などの追加で複数の防犯対策をしましょう」と、県警は注意喚起の中で訴えています。盗難防止対策の考え方を愛知県自動車盗難防止協議会の事務局・井口靖菜氏が話します。

「メーカーのセキュリティ解除の方法は研究しつくされている。どのクルマにも共通する盗難防止装置だけでは防ぎきれないと考えたほうがいい」

 窃盗集団の目的は、捕まらないように効率よく車両を盗むことです。

「犯行に時間がかかることを、車外から見てわかるようにアピールする独自の対策を使うことです。例えば、ハンドルロックや車外品のイモビライザーなどを複数使って、解除に時間を要するとアピールすることです」(前同)

 官民で盗難防止を考える「愛知県自動車盗難防止協議会」は、警察のほか自動車販売会社、保険会社などで構成されます。会長は名古屋トヨペットの小林 剛社長です。協議会では2023年10月から、名古屋市内の一部の時間貸し駐車場でハンドルロックを無料で貸し出す取り組みを始めました。ハンドルロックの施錠体験から、自主防犯対策を促すことを目的としています。


愛知県警(中島みなみ撮影)。

 また、愛知県の協議会では独自に「窃盗情報報奨金制度」を設けて、自動車車両盗難の情報提供者に10万円の報奨金を支払うことを続けています。

 2022年3月までは車両情報提供の報奨金は1万円でした。これでは効果が見込めないと引き上げました。それでも、この制度は犯人の検挙に結び付いた場合なので、目覚ましい実績を上げるまでには至っていません。車両以外の部品の情報提供は1万円です。

 盗難被害に対する関心を高める努力も続けています。2023年の名古屋モビリティショーで、協議会は県警とともにブースを出展し、容疑者の運転する被害車両が交通事故を起こした実車の展示を行いました。車両用品店でも同様の展示を行い、見学者に被害の臨場感を伝えています。