スキルス胃がんにかかりやすい年齢層とは?Medical DOC監修医がスキルス胃がんを発症しやすい年齢層・年齢別の生存率・なりやすい人の特徴・症状・原因・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
≫「スキルス胃がんになる確率が高い人」はご存知ですか?症状についても解説!
監修医師:
木村 香菜(医師)
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
「スキルス胃がん」とは?
スキルス胃がんは、胃がんの中でも胃の内壁から始まり、胃の筋層に広がっていくタイプのものを指します。そのため、スキルス胃がんでは、胃壁が厚く硬くなります。
スキルス胃がんは、進行が早く、腹膜にがん細胞が散らばる腹膜播種(ふくまくはしゅ)が起こりやすいという特徴があります。また、内視鏡での診断が困難な場合もあり、症状が出現し診断された時には進行していることも多いです。そのため、治すことが難しいがんの一つです。
スキルス胃がんを発症しやすい年齢層
スキルス胃がんの年齢別発症リスクは、一般的な胃がんとは異なる傾向があります。
一般的な胃がんの場合、2019年では男女ともに50歳代以降で増加し始め、男性では80歳代がピークとなり、女性でも80~90歳代で多くみられています。
一方で、スキルス胃がんは、女性は20~40歳、男性は60歳以上で発症しやすいとされています。こうした点を踏まえると、スキルス胃がんは他の胃がんと比較すると、特に女性では若い年齢の方で発症する傾向にあると言えるでしょう。
スキルス胃がんの生存率
スキルス胃がんは悪性度が高く、予後が不良なことで知られています。
胃がんは、がんの大きさ(T分類)、リンパ節転移(N分類)、他臓器への有無(M分類)によって臨床分類がI期からIV期に決定されます。
I期はがんが小さくリンパ節転移がない、II期はリンパ節転移がある、あるいはがんが進行しているもののリンパ節転移がない状態です。そしてIII期はがんも進行しリンパ節転移もある状態で、IV期は他の臓器へも転移している状態を指します。
スキルス胃がんを含めた胃がん全体での5年生存率は、病期全体で70.2%、I期92.8%、II期67.2%、IIIl期41.3%、IV期6.3%と報告されています。
一方で、スキルス胃がんの生存率は、一般的な胃がんよりも低い傾向にあります。生存率は、主にがんの浸潤の深さと、治療の可能性に影響されます。
国内の研究では、がんを残さずに手術ができた場合には、5年生存率が31%であったとされています。また、他の研究では、II/III期の患者については、初回手術後の5年生存率はそれぞれ24.3%で、中央生存期間は1150日と報告されています。また、IV期の患者については、初回手術後の2年生存率と5年生存率はそれぞれ13.7%と0%で、中央生存期間は250日と報告されています。
スキルス胃がんの生存率は早期発見と適切な治療によって大きく改善する可能性があります。早期発見が極めて重要であると言えるでしょう。
スキルス胃がんになりやすい人の特徴
スキルス胃がんを含めた、胃がんになるリスクが高い人の特徴について解説します。
ヘリコバクター・ピロリ菌に感染している
ヘリコバクター・ピロリ菌(以下、ピロリ菌)感染は、胃がん発症の主要なリスク因子です。ピロリ菌に感染している場合、初期には症状が現れにくいことが多いです。しかし、長期間にわたって感染が続くと、胃の不快感や胃もたれ、食欲不振などの症状が出ることがあります。慢性胃炎や胃潰瘍などを発症することもあり、さらには胃がん発症のリスクも高まります。検診などでもピロリ菌の感染の有無をチェックすることができます。もしもピロリ菌に感染している場合には、除菌治療を受けましょう。
タバコを吸っている
タバコは、胃がんのみならず肺がんや食道がん、膵臓がん、大腸がん、肝細胞がん、子宮頸がん、頭頸部がん、膀胱がんなど、多くのがんに関連していることがわかっています。
タバコを吸う人は吸わない人に比べ、なんらかのがんになるリスクが約1.5倍高まることがわかっています。タバコを吸っている場合には、禁煙することをお勧めします。自分の力のみでは難しい場合には、禁煙外来などを受診することも検討しましょう。
高塩分食を好む
塩分濃度が高い食べ物を摂る人は、男女ともに胃がんのリスクが高いということが報告されています。そのため、いくらなどや塩辛などの塩蔵食品の過剰摂取は控え、減塩することが大切です。減塩は、胃がんのみならず、高血圧や循環器疾患の予防にもなります。
スキルス胃がんの代表的な症状
スキルス胃がんは早期発見が難しく、発見された時には進行していることも多いです。ここでは、進行した胃がんの症状について解説します。
このような症状があれば、早めに消化器内科を受診し、医師に相談することが重要です。
胃の不快感や腹痛
スキルス胃がんは胃壁を厚くし、胃の動きを妨げるため、胃の不快感や腹痛が現れることがあります。特に食後に感じることが多く、早期には軽い不調として見過ごされがちです。しかし、進行すると強い痛みや持続的な不快感が現れることがあります。
食欲不振と体重減少
スキルス胃がんが進行すると、食事がうまく消化されず、食欲不振が生じます。また、食べ物を少量しか摂取できなくなるため、急激な体重減少を伴うことが多いです。このような体重減少は、がんが進行しているサインであることが多く、注意が必要です。
吐き気や嘔吐
スキルス胃がんが胃の動きを制限することで、食物が胃から腸へ正常に移動しなくなり、吐き気や嘔吐が引き起こされることがあります。特に、食後にこれらの症状が現れることが多く、進行すると症状が悪化します。
スキルス胃がんの主な原因
それでは、スキルス胃がんの主な原因について解説します。
遺伝的な要因
スキルス胃がんのみならず、胃がんのリスクが高くなる遺伝子変異を持つ方がいます。
例えば、遺伝性びまん性胃がん(HDGC)という遺伝性の疾患があります。この疾患は特定の遺伝子変異(CDH1遺伝子)が関連し、若年での胃がんの発症リスクが高いことが特徴です。
胃の手術歴がある
胃がんは、潰瘍などの非がん性疾患の治療のために胃の一部を切除した人に発生する可能性が高くなります。また、手術後に小腸から胃への胆汁の逆流もリスクを増大させる可能性があります。これらのがんは、通常、手術から何年も経ってから発生します。
太り過ぎている
肥満は胃がんのリスクを高める可能性があります。
BMI(body mass index:体格指数)が30 kg/m2 以上の場合、胃がんのリスクが増加すると報告されています。特に男性と非アジア人の胃の噴門部(ふんもんぶ)という入口部分のがんのリスク増加と関連しています。
健康的な食生活や適度な運動を心がけ、太り過ぎにならないように気をつけましょう。
スキルス胃がんの予防法
スキルス胃がんに特化した予防法はありませんが、胃がん全般のリスクを下げる方法としては以下のようなものがあります。
禁煙する
喫煙は胃がんのみならず、さまざまながんのリスクを高めます。現在喫煙している場合には、禁煙しましょう。もしもまだ喫煙していないのであれば、始めないようにしましょう。自力での禁煙が難しい場合には、禁煙外来などの医療機関を受診するようにするのも良いでしょう。
食生活に気を配る
毎日の食事で、果物や野菜を取り入れるようにしましょう。また、塩分や塩辛い食品の摂りすぎには気をつけましょう。さらに、熱すぎる飲み物や食べ物をとらないようにしましょう。こうしたポイントを守ることで、胃がんだけでなく、食道がんや食道炎のリスクを下げることも期待できます。
胃がん検診を受ける
胃がん検診を受けることで、がんの早期発見につながることが期待できます。
日本では、50歳以上の男女に対し、2年に1回の検診が推奨されています。方法は、胃部X線検査または胃内視鏡検査です。
ただし、腹痛や吐き気、胃の不快感などの症状がある場合には、検診を待たずに消化器内科などの医療機関を受診するようにしましょう。
「スキルス胃がんにかかる年齢」についてよくある質問
ここまでスキルス胃がんにかかる年齢を紹介しました。ここでは「スキルス胃がんにかかる年齢」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
20代・30代でスキルス胃がんを発症する確率は高いのでしょうか?
木村 香菜(医師)
20代・30代でスキルス胃がんを発症する確率は、全体的には低いものの、 通常のタイプの胃がんと比較して若い世代に発症することが特徴の一つです。一般的な胃がんは高齢者に多く見られますが、スキルス胃がんは若い女性に多く見られる傾向があるため、20代・30代での発症例も存在します。
スキルス胃がんの罹患率が高い年齢層について教えてください。
木村 香菜(医師)
スキルス胃がんの発症年齢は、性別によって異なります。スキルス胃がんの中でも、特に急速に進行するタイプは、女性は20~40歳、男性は60歳以上で発症しやすいとされています。そのため、特に女性においては通常のタイプの胃がんよりも若い方に発症しやすいと言えます。
編集部まとめ
スキルス胃がんは、通常の胃がんと比べると若い方でもなりやすいですが、予防法は通常の胃がんと同様です。もし家族に、特に若い時に胃がんに罹患した方がいる場合には、消化器内科医に相談することも大切です。定期的にがん検診を受け、何らかの症状がある場合には早めに消化器内科を受診しましょう。
「スキルス胃がん」と関連する病気
「スキルス胃がん」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器内科の病気
ヘリコバクター・ピロリ感染
慢性胃炎胃潰瘍
遺伝性びまん性胃がん(HDGC)
スキルス胃がんは上記のような病気と関連していることがあります。気になる症状があったり、家族に胃がんの方が多くみられたりする場合には、消化器内科を受診しましょう。
「スキルス胃がん」と関連する症状
「スキルス胃がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
胃痛
食欲不振
吐き気・嘔吐
胃の膨満感
体重減少
貧血
これらの症状が続く場合、早めに医師の診察を受けることが重要です。
参考文献
胃がん予防・検診(がん情報サービス)
科学的根拠に基づくがん予防(がん情報サービス)
胃がんについて(がん情報サービス)