衆院選への出馬を表明した世耕弘成氏(写真・共同通信)
《血みどろの争い》
こんな言葉がSNS上に飛び交っている。争いの舞台は衆院和歌山2区。主役は、自民党を離党した世耕弘成前参院幹事長と、引退を決めている二階俊博元幹事長の三男・伸康氏だ。
「世耕氏は10月5日、和歌山県田辺市で記者会見し、10月27日投開票の衆院選に和歌山2区から無所属でくら替え出馬することを表明。
会見では『26年の政治経験を生かし、和歌山の発展や国のために働くチャンスをもらえるか、有権者の声を聞きたい』と決意を述べました。
裏金問題で離党したことについては『心からお詫びする』と謝罪。『大きな挫折を味わっているなかで、あえて厳しい選挙にチャレンジしたい』と述べるにとどまりました。世耕氏は裏金事件で離党処分を受けており、無所属で出ることになります」(政治担当記者)
世耕氏は、5年間で1542万円を政治資金収支報告書に記載しなかったとして、8段階の処分で除名の次に重い「離党の勧告」を受け、離党届を提出した経緯がある。
「処分を受け入れたとき、世耕氏は『まったく不満がない。明鏡止水の心境だ』と答えていましたが、心中、穏やかではなかったでしょう。
いっぽうの二階氏は、裏金問題では5年間の不記載額が3526万円ともっとも多かったのですが、次期衆院選への不出馬を表明したことから不問になりました。三男・伸康氏は、すでに自民党が擁立を決めており、保守分裂選挙となることは間違いありません。
もともと、世耕氏が目論んでいた衆院へのくら替えと、それに立ちはだかった二階氏の “紀州戦争” が再燃。お互いの恨みは推して知るべしですから、“血みどろの戦い” になると言われているのです」(同)
二階氏は自身の不記載のほか、二階派(志帥会)のパーティー券の売上超過分や支出など、5年間で3億8000万円あまりを政治資金収支報告書に不記載だったことで、元会計責任者が実刑判決を受けている。そのため、Xには、こんな声があがっている。
《和歌山2区は裏金世耕vs大裏金二階の血みどろの争い.汚い醜い.》
二階氏側の “絶対に落選させる” という思いは強烈なようで、世耕氏の出馬会見に先立つ10月4日、伸康氏を擁立する和歌山県連は、中村裕一幹事長名義で世耕氏の出馬を批判する談話を発表した。
《選挙に立候補することは自由ですし、憲法に保障された大切な権利です》と前置きをしたうえで、
《党規違反によって離党勧告の処分を受けて離党したのちに、党の正式な手続きで選任された公認候補に対抗して立候補することは重大な党規違反に準ずる行為です。
さらに当選したら復党するなどということは、党規をないがしろにする脱法的行為です。今、こんなやり方こそが批判を浴びています》
と激烈に批判したのだ。
「不思議なのが、世耕氏がすでに処分を受けて離党しているのに、県連が『重大な党規違反に準ずる』『党規をないがしろにする脱法的行為』と強く主張している点です。世耕さんはもともと参院で絶大な権力をもっていましたから、離党したいまでも自民党への影響力が残っているのでしょう。
世耕氏はもともと、『将来は総理になる』という野望を持っていました。そのため、衆院へのくら替えは悲願だったのです。自民党を離党したままでは総理になれませんが、衆院選で勝てば、いずれ復党できる可能性も出てくると考えているのでしょう。
とくに、裏金議員の公認問題ひとつでも、態度がコロコロ変わる石破政権では、世耕氏の復党もうやむやのうちに認められてもおかしくありません。二階氏側は、そうした事態を恐れているのでしょう」(同)
Xにはこんなコメントもあった。
《辞職もせず、離党して、くら替えして、もう一回選挙に出る? 全く反省してないな!絶対に落選させましょう!》
“裏金” 世耕氏が落選しても、相手が “大裏金” 二階氏の三男であることが悩ましい……。