佐藤賢&七條祐樹打撃投手は2018年の復帰後“専属打撃投手”を務めた

■ヤクルト 5ー3 広島(2日・神宮)

 ヤクルトの青木宣親外野手は2日、神宮球場で行われた広島戦で引退試合を行った。最後の試合前練習、フリー打撃を終えると、佐藤賢打撃投手兼スコアラー、七條祐樹打撃投手兼1軍サブマネジャー兼用具と握手を交わし、熱いハグ。日本球界復帰後、“専属打撃投手”だった2人には感謝のメッセージをしたためたバットを送るなど、思いは尽きなかった。

 全員が“青木Tシャツ”を着用し、練習からいつもと違う空気が流れた神宮。それでも青木はいつも通りバットを振った。「ちょっと微調整したりとか。やはり1本ヒットを打ちたいし、ホームラン打ちたいし」。安打製造機らしく、最後まで貪欲に快音を追い求めた。そして最後の1球を打ち終えると、2人の元へ歩み寄った。

「七條と賢がいつも投げてくれていたんですけど、彼らの球をもう打てないということで、なんか終わった後に感謝を伝えたくて握手をしました。そういう裏方さんがいたからこそ、こうやってたくさんヒットを打つことができたし、21年もやれたと思うので、本当にそういう裏方さんには感謝しています」

 投げ続けた2人にとっても、特別な時間だった。佐藤打撃投手は青木と同じ81年世代(青木は82年1月生まれ)。明大と早大で東京六大学リーグ時代からしのぎを削り、2003年ドラフトで同期入団した。2011年限りで青木は退団して海を渡り、佐藤打撃投手は戦力外通告を受けて現役を引退。2018年に「選手と裏方」として再び同じチームとなった。

ドラフト同期…肌で感じた「パワーがついて技術も上がっている」

「最初はちょっと違和感があった」というのが本音だろう。しかし日本復帰後、最初に受けた衝撃は忘れない。「逆方向にも本塁打とか入れていたし、メジャーに行く前はそんな感じじゃなかったから、パワーがついて技術も上がっているんだなと思いました」。それからは近くで青木の状態を肌で感じてきた。

 七條打撃投手も2018年から7年間にわたり、マウンドと打席で対峙してきた。同じ宮崎県出身。「青木さんに投げられたこと、めちゃくちゃうれしかったです。最初は緊張しましたけど、技術があるから何でも打ってくれる。だから投げやすかったです。最後は泣きそうになりました」と感慨深げだった。

 毎年、裏方にバットをプレゼントしていた青木は最後、2人にだけ特別なバットを贈った。そこにはサインとともにこう記されていた。「おかげさまでたくさんヒットが打てました。ありがとう!」。青木が慕われる理由が詰まっているようだった。(町田利衣 / Rie Machida)