連載「今週のカレーとスパイス」でお馴染み“カレーおじさん \(^o^)/”が、ひと月に食べたカレーとスパイス料理を振り返る月イチ企画。2024年9月は、名店になり得る実力を備えた注目の新店を4つご紹介!
【カレーおじさん\(^o^)/の今月のカレーとスパイス】2024年9月を振り返る
都内では春から夏にかけてカレーの新店舗が続々と誕生していましたが、そのペースも少しずつ落ち着いてきた印象。しかしまだまだ気づかれていない新たな名店候補も少なからず存在します。今月はそんなお店をピックアップしました。
インド人街で誕生したスリランカ料理の注目店隠れカレー激戦区幡ヶ谷でスタートしたカレーバルクロスボーダーをスローガンに掲げる隠れ家的名店シンプルイズベストな2つのカレーを提供する“カレーのお店”以上4店舗のご紹介です。食欲の秋ということでついつい食べ過ぎてしまう時期ですが、今回ご紹介したお店はどこもヘルシーな料理が多いというのもおすすめポイント。程よく楽しく、健康的にカレーを楽しみましょう!
【第1週のカレーとスパイス】スリランカ料理はもっと注目されるべき! わざわざ行って損ナシの新店が葛西に誕生「ROYAL HUB(ロイヤル ハブ)」
日本に在留しているインド人の約1割を占めるおよそ3,000人が住んでいることから、日本一のインド人街として知られる東京・西葛西。当然その近隣にもインド人在留者は多く、インド料理のお店も多数存在します。西葛西の隣駅である葛西周辺も同様なのですが、今回ご紹介するのはインドのお隣スリランカ料理のレストラン。2024年7月16日にオープンした「ROYAL HUB」です。
バスを模したデザインの外観が可愛らしいお店。店内に入ればシックな雰囲気の中、日本語が堪能なスリランカ人スタッフの上品な接客が印象的。メニューはスリランカカレーのワンプレートを中心に、フライドライス、デビル(スリランカの中華風炒め料理)などもあります。
まずは「2度蒸留アラックのコーラ割り」759円を。
アラックとは中東などでも飲まれる蒸留酒ですが、スリランカのアラックはココナッツが原料となったものが多く、こちらのコーラ割りに使われた銘柄はエクストラスペシャルで、ココヤシやサトウキビなどをもとに作られたブレンドアラックでした。
そのまま飲むも良し、炭酸で割るも良し。コーラで割ればスパイス料理との相性が良く、飲みやすく爽やかな甘さです。
合わせるおつまみに「フィッシュカトレット」539円を。鯖のカトレットはふんわりしっとりな食感の中身とサクサクの衣の食感の変化が楽しい一品。他のスリランカ料理店でいただくカトレットと比べても、かなり上品な仕上がりだと感じました。
メインには店名を冠した「ロイヤルプレート」1,540円を。カレーが選べるのですが、今回はポークにしました。
柔らかく優しくマイルドなパリップ(スリランカの豆カレー)と、スモーキーかつスパイシーなポークカレー。これぞスリランカというオーセンティックな味わいです。
副菜の茄子のモージュは極小サイズの赤玉ねぎも入っており、油でしっかり火を通した茄子のねっとりした食感と、赤玉ねぎのシャキッとした食感が合わさるのが楽しく、その食感がおいしさを1段階も2段階も上げています。
総じて感じたのは味も接客も上品だということ。それでいてお店は親しみやすい雰囲気。スリランカ料理店は増えそうでなかなか増えないなと感じているのですが、こちらのような隠れた名店が人気が出る前に撤退を余儀なくされるという事象を少なからず見てきました。
スリランカ料理はヘルシーなものも多く、もっと流行ってしかるべきだと考えています。こちらのお店もスリランカ料理好きならわざわざ電車に乗って食べに行っても損の無いレベル。カトレットをアテに軽く飲むも良し、しっかりとカレープレートを味わうも良し。気軽に行けるお店なので気になった方はすぐにでも行ってみてください。
<店舗情報>
◆ROYAL HUB
住所 : 東京都江戸川区中葛西3-26-6 セントラルコーポ 1F
TEL : 070-3792-1397
【第2週のカレーとスパイス】昼はカレー、夜はスパイスバル! 隠れカレー激戦区・幡ヶ谷に注目店がオープン「お酒とスパイス カンテラ」
幡ヶ谷駅北口を出てすぐの路地を入ると、個人的にも好きな飲食店が立ち並ぶエリアがあります。その場所に、昼はカレー、夜はスパイス料理で飲めるお店が、2024年8月8日にオープンしました。その名も「お酒とスパイス カンテラ」。
ガラス張りで開放感があり、中の様子も見えて入りやすい雰囲気。カウンター席とテーブル席があり、1人でもグループでも使い勝手が良さそうです。スパイスおつまみの多くにハーフサイズもあり、色々食べたい時にもうれしいメニュー構成。今回は2人で行ったのでテーブル席でフルサイズのおつまみを色々といただきました。
スパイスバルということで飲み物も面白いメニューがあり「はまぐり出汁入りクラマトサワー」880円で乾杯。
はまぐりのだしとトマトジュースとお酒とスパイスの融合。爽やかな飲み口でトマトとはまぐりのうまみが楽しい一杯です。
店名を冠した「カンテラチキン65」825円は、南インド料理のチキン65と名古屋の郷土料理である甘辛い手羽先の融合。食感も良く、バランスの良い甘さとしょっぱさにスパイスとハーブの香りも加わって、とても良いおつまみとなっています。
「ラムときのこのクミン炒め」1,155円はクミンの香り。程よい火入れと赤玉ねぎのシャキッとした食感とエリンギのプリッとした食感が楽しい一皿。
「スパイス半熟卵のせポテサラ」660円はしっとりした舌触りのポテトに水菜も加わってしっかりサラダでありつつ、スパイス半熟卵の存在もあって、おかずにもなるポテトサラダです。
メインは「キーマカレー」1,210円にしました。たっぷりのパクチーやミントを中心とした青菜の下に和風のそぼろ的なキーマが隠れています。レモンを搾って混ぜて食べれば一体感が生まれます。一緒に行った友人はパクチーが苦手なのですが「これならおいしく食べられる。不思議な調和!」と驚いていました。
会計時、シェフにおいしかったですと伝えると「お久しぶりです」と。どこかで見たことあるお顔だと思っていたのですが、某人気店で腕を振るっていた方でした。カフェ居酒屋から料理人としての経歴をスタートし、その時の同僚と共に開店したカレーカフェ的なお店が人気となり、僕はそこで出会っていました。
その後、カレー屋「ギギ」としていくつかの飲食店でカレーを卸し、赤坂見附にて「間借りカレーギギ」をオープン、そして今回の独立店舗を開業したという経緯。
当時とはまた違うレシピで料理を出しているとのことで、進化も感じる味。昼は4種ほどのカレーがあり、あいがけも可能。1人でもグループでも、昼でも夜でも、さまざまなニーズに対応してくれるお店。幡ヶ谷は隠れカレー激戦区だと感じているのですが、そのレベルを上げる期待の新店舗の誕生だと言えるでしょう。
<店舗情報>
◆お酒とスパイス カンテラ
住所 : 東京都渋谷区幡ヶ谷2-12-18
TEL : 03-4363-1809
【第3週のカレーとスパイス】秘密の楽園みたい! 神田でビリヤニが美味と評判の間借り店が移転オープン「パラダイスアレー」
神田駅ガード下に面白いお店を見つけました。入り口からしてわかりにくいのですが、JR神田駅の東口を出てすぐ、居酒屋の「大松」と「伊勢本店」の間の階段を上ったところにある隠れ家的なお店です。
扉を開けて店に入ってみるとカフェ的な空間。壁に面するように席が並んでいるので、少人数での利用がちょうど良さそうです。店内は店主がワンオペで切り盛り。キッチンも開放的なので独特な雰囲気となっています。
昼はカレーとビリヤニ、夜はおつまみもあり、スイーツも用意しているという幅広いメニュー構成。
各カレー(1,200円)に300円追加であいがけにもできるということで「天竺カレー」に「ムンバイキーマ」のあいがけをご飯少なめで注文。副菜ものったワンプレートです。
天竺カレーはカレーというよりも、食べ応えある骨付きチキンをカレーソースで煮込んだというイメージ。野菜やフルーツの甘みとスパイスの香りや良い意味での苦みが調和していて実においしいです。
ムンバイキーマを食べてみるとその現地感に驚きました。イラニアンキーマとも呼ばれる牛挽き肉のキーマなのですが、肉の味が絶妙なスパイス使いでワイルドに引き立てられていて、インド現地で食べているような本格的なテイスト。インド料理マニアであるほど楽しめるおいしさだと言えるでしょう。
これは面白いぞということで気になった「ソーセージのシードル煮」1,000円を頼んでみると、インド産のソーセージを使用し、シードルの甘酸っぱさにカシアやカルダモンといったホールスパイスが使用されていて香り高く、ピリッとした辛さが味を引き締めています。スペイン・バスク地方の郷土料理をスパイス仕立てでアレンジした逸品。お店のコンセプトでもある「クロスボーダー」を感じる楽しい料理です。
日を改めて今度は「鯖のビリヤニ」1,500円を食べに行きました。南インド・ケララのサラセリーという街のスタイルを踏襲したビリヤニは、皿に盛り付けられているのですが、これをターリーにひっくり返していただきます。
鯖の豊潤なうまみと香り高くパラパラしたバスマティライスの融合。鯖好きでビリヤニ好きならたまらない味です。
どの料理も基本的にはオーセンティックなおいしさで、そこに工夫を加えた料理もあり、どういう経緯でこうなったのか気になってマスターにお話をうかがってみると、イタリアンや和食などで約10年間料理の仕事をした後、会社員となるもインド旅行を機にスパイスに魅了され、自作のカレー弁当を持参して出社するようになったそうです。さまざまなスパイス料理を作っていく中で、これを他の人にも食べてもらいたいとの思いからお店を開くことを決意。再びインドへ向かい、現地で料理を習ってレベルアップした後にお店をスタートさせたとのこと。その熱い思いと、スパイスの楽しさを感じる料理の数々。だからこそ僕の胸にも刺さったのでしょう。
マスターは「是非カレー好きではない方にも訪れていただきたいです。うちには辛いだけでなく甘くてスパイシーな料理もあります。スパイスの力で国境を越える感覚を感じていただければこの上なくうれしいです」と語ってくれました。スパイスとは辛いものというイメージを持つ方が多いのが現状ですが、実は辛さはまったくなく甘いものもあります。スパイスを日本語に訳すと香辛料と書きますが、辛さより香りの方が先にくるのです。
物腰柔らかなマスターが楽しみながら作るスパイス料理。マニアはもちろん、初心者の方にも是非行ってほしいお店です。
<店舗情報>
◆パラダイスアレー
住所 : 東京都千代田区鍛冶町2-12-13 2F
TEL : 不明の為情報お待ちしております
【第4週のカレーとスパイス】その名も「カレーのお店」。ドライキーマカレー好きがうなる新店が江戸川橋に誕生
江戸川橋駅近くを歩いていると「カレーのお店」という看板を見つけました。店名もそのまま「カレーのお店」。2024年7月1日にオープンしたようです。
月曜から金曜までの昼のみ営業。11:30からのオープンです。メニューは「オリジナルチキンカレー」1,300円と「ドライキーマカレー」1,300円の2本立て。あいがけはありません。
券売機で食券を購入するとキッチンまでそれが伝わるシステム。ワンオペでの営業なのですが、シェフに「ご飯少なめで」と声掛けすると気さくに対応してくれました。
オリジナルチキンカレーは玉ねぎの甘みとトマトのうまみに、ホールで使用したカルダモンやクローブの香りが調和し、ごろっと存在感のあるジューシーなチキンと仕上げにふりかけられたカスリメティで王道のスパイスカレーといった趣。
添えられたマッシュポテトやキャベツの千切りのピクルスにセンスを感じます。
こちらのカレーはスパイスカレー慣れしていない方にも食べやすく、慣れている方にも納得のクオリティと言えるでしょう。
僕のおすすめはドライキーマカレーの方です。牛豚の合い挽き肉にナッツやドライフルーツも入ったカレーは、昭和の喫茶店や洋食店で見かけた昔ながらのドライカレーの面影も見せつつ、スパイスの使い方や仕上げのカスリメティは令和のスパイスカレーのキーマ的。
言ってみればこれは昭和と令和のフュージョン。昔も今もずっとカレーが好きだという方に最も楽しめるカレーではないでしょうか。もちろん昔のカレー好きにも今のカレー好きにもおいしいと思えるクオリティです。
シェフはいったいどのような方なのかと興味を持ちお話を聞いてみると、シェフは元々パン職人だったのが、スパイスカレーと出合ってそのおいしさと身体にも良いことを知ってハマり、さまざまなお店を食べ歩きながら自分でも作るようになり、それを続けている中で現店舗のオーナーと出会い、カレーのお店を初めてみないかという声かけに乗ったとのこと。
確かにこちらのカレーもヘルシーなおいしさであり、元々パン職人であるならカレーパンも食べてみたいという希望も膨らみます。基本はご紹介した2種のカレーライスなのですが、祝日などに限定カレーを出すこともあるのだそうでそちらも興味津々。
洋食系カレーやインドネパール系のお店こそあれど、スパイスカレーのお店の数が乏しい江戸川橋界隈において期待の新店舗です。
<店舗情報>
◆カレーのお店
住所 : 東京都新宿区西五軒町13-3 関谷マンション 1F
TEL : 不明の為情報お待ちしております
※価格はすべて税込
撮影:カレーおじさん
文:カレーおじさん、食べログマガジン編集部
The post 食欲の秋、やっぱりカレーが食べたい! 今のうちに行っておきたいカレーの実力店4選 first appeared on 食べログマガジン.外部リンク食べログマガジン
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