[画像] 驚きの「盗難手法」が増加中? 盗難車のロンダリング「目玉抜き」とは? 車台番号張替えが横行か

激安注意!「目玉抜き」盗難車30系アルファードが今、国内に出回り始めている

 最近、じわじわと増えている盗難手法が、トヨタ「3代目アルファード(30系)」などが対象とされる「目玉抜き」車両です。
 
「目玉抜き」と聞いてもピンときませんが、どのような行為なのでしょうか。

クルマ自体は30アルファードなのに、車台番号が20アルファード(2代目)になっている車両が存在…(画像:ユーザー提供)

 2023年の盗難車(認知件数)ランキングでナンバー1となったトヨタ「アルファード」は700台以上が盗まれました。

【画像】「えっ…!」これが盗まれやすいクルマの特徴です。(26枚)

 アルファード含め、日本で盗まれた盗難車はほとんどがバラされて部品としてコンテナに詰めて密輸して目的地に到着後、組み立てを行い再び中古車として流通しています。

 しかし、すべてがバラされるわけではありません。

 とくにアルファードやレクサスなどの高級車は解体せず「丸車(バラバラに解体されることなくほぼ完全な状態)」のままで海外に持ち出されることもあります。

 年式が新しい国産高級車は非常に高い値段で取引されるため、輸出にコストや手間はかかっても解体せずにそのままの姿で市場に出されることも珍しくないのです。

 このような状況について、不正輸出を監視する立場にあるX氏は次のように話しています。

「比較的安価な軽1BOXやハイエースなどはコスト重視で1つのコンテナにいかにたくさん詰め込むか?が重要になるため、解体されて効率よく重ねて積み込みます。

 仕向け地によって輸入年式に規制があったり輸入関税を免れる目的もあったりで、分解してコンテナ詰めすることもあります。

 また、アルファードやレクサスなどの高級車はコストがかかっても分解せず、クルマのままでコンテナ詰めして輸出されることもあります。

 裕福な買い手がついているクルマは特にその傾向があります」

 一般的に盗難車が「丸車」で輸出されるには正規の輸出中古車と同輸出のための書類(輸出抹消登録証明など)を用意する必要があり、様々なハードルがありますが、実はX線検査は殆ど行われていません。

 その結果、コンテナごと検査できる大型X線装置を持つ全国15の港で1年間に盗難車が発見される例は年間わずか4−5台です。2023年は5台でした。

 そして今、日本での流通がじわじわと増えているのが、3代目アルファード(30系)に代表される「目玉抜き」車両です。

 目玉抜きとはアンダーグラウンドな業界用語の一つでA車(盗難車)の車台番号を取り去って、同じ型式のB車の車台番号を貼り付けた車両のことを言います。

 いわば、盗難車のロンダリング(洗浄)です。

 盗難車の他、一部の金融車(クルマを担保に借金をしたが返済できずオーナーも行方不明、名義変更の手続きもできないような車両)などが対象になります。

 目玉抜き車両はクルマに刻印された車台番号だけではなく、もちろん、コーションプレートや自賠責保険などもB車の車台番号に変えられています。

 コーションプレートとは、車台番号やエンジン番号、外装・内装色、製造工場などの情報が記載された薄い金属板のことでエンジンルームやドアを開けたところに貼られています。

 これは自動車メーカーによる再発行ができませんが、コーションプレートがなくても車検には通ります。

 ただし、プレートを失くした理由などを聞かれて「盗難車ではないか?」の疑いを抱かれることはあります。

 なお、クルマが盗難されると警察に盗難の被害届を出しますが、それが受理されると車検証に関連した書類に「盗難情報設定中」と記載されます。

 この情報は早ければ被害届が出た当日、遅くとも翌日の夕方までには警察からの情報が運輸支局に共有されることになります。

 これが設定されている限り、名義変更や抹消登録(廃車)、輸出抹消登録(輸出のために国内の登録を抹消する)などの手続きは一切できなくなります。

 当然ですが盗難車を海外に出す場合も盗難情報が出ている状態では抹消登録や輸出の手続きもできません。税関の審査によって盗難車だとわかれば、即刻、そのクルマは警察に引き渡されることになります。

事故で大破したクルマからも車台番号を切り取る?

 目玉抜きを実行するには前述の「B車(車台番号含む書類)」が必要となります。

 B車の車台番号を切り取って盗難したA車に貼り付けるわけですが、そのB車はどうやって入手するのでしょうか。

 これにはいろいろな方法がありますが、一例として業者オークションで大破したり水没したりしたクルマを入手し、そこから車台番号や書類を入手する方法があります。

 業者オークションには「事故車・水没車コーナー」が設置されることがありそこに出品された全損車を書類(車台番号の刻印やコーションプレートなどの総称)込みで買い取って盗難車に貼りかえる手法です。

 例えば2024年9月に開催された業者オークションでは大破した全損の30アルファードが200万円(税込み)近い価格で落札されています。

 他には車両火災によって全焼となり骨組みしか残っていない国産高級車が100万円以上で落札されたことも何度かありました。

 盗難車などの訳あり車を「復活」させるには、「書類」がいかに重要かということなのです。

 ところで盗難車と知らずに買ってしまったらどうなるのでしょうか。

 運輸支局に実際の書類を見せて確認したところ、「名義変更は書類さえそろっていれば不可能ではない」とのこと。

 しかし、車検は走行距離やエンジン型式なども確認されるため、名義変更よりはハードルが上がります。

 また、驚きの事実を前出のX氏が教えてくれました。

「とくに最近増えているのが、クルマ自体は30アルファードなのに、車台番号が20アルファード(2代目)になっている車両です。

 30系と20系では外観のデザインや内装の仕様も全く違いますが、車台番号が刻印される位置はほぼ一緒です。

 10系アルファードはボンネットの中でしたが20系から運転席の下になりました。

 どちらも形状はそっくりですから、税関などでは意外と気づかれないこともあるでしょう。

 つけた位置はかなりズレていても、一般にはわからないでしょう」

クルマが盗難されると警察に盗難の被害届を出しますが、それが受理されると車検証に関連した書類に「盗難情報設定中」と記載される(画像:ユーザー提供)

 では、「盗難車」を買わないためにはどのような部分に注意すれば良いのでしょうか。以下がそのまとめです。

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 ・中古車情報誌などでそのクルマの相場を調べて相場より50〜100万円以上安ければ警戒。

 ・購入時、売人は現金での支払いを要求。「現金で買うと納車待ちの順番を上げてあげる」などといわれたら、その店で買うのはやめましょう。盗難車の可能性もあり、またお金だけとって納車しない可能性もあります。

 ・購入予定車の車台番号、名義変更のための書類、車検証などは必ず購入前に確認。
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 とくに個人売買、オンライン販売には要注意です。