物語の軸となる
真っ直ぐなネイア
――青山さんが演じるネイアが主人公・アインズの言葉に心酔していく流れは、今回の物語の軸のひとつですね。
青山 私自身がオーデョションの際に感じていたのは、ネイアは本当に普通の子だということで。『オーバーロード』はもの凄く突出した能力を持っているキャラクターが集まって物語を作っていますが、ネイアには何もないんです。私自身はそこに共感できました。「何もない」という感情は劣等感につながります。また、彼女には虐げられた過去もあり、上司のレメディオスからもぞんざいに扱われたりします。でも、そういったことから生じる”負のエネルギー”をプラスに変える力のようなものもネイアは持っているんです。演じる時も「自分なんて……」という感情を基本に、それでも理不尽に負けないという意志を意識しました。
瀬戸 私は、ネイアは本当に真っ直ぐでピュアな子だなと思いました。聖騎士団の従者ですから聡明さはしっかり持っていて……だからこそなのかな? 自分の理想や信念と重なるアインズという存在と出会ったことで、他のものが見えなくなる。その変化は少し狂気を感じるくらいの迫力でした。
青山 アインズへの思いは「狂信」に」近いですし、物語が進むにつれて排他的になってしまうんですよね。「アインズ様は凄いんだ」と言っている目が怖いと感じるくらいで(笑)。
瀬戸 その不屈感の表現は凄まじかったです。かなり長丁場の収録でしたけれど、ネイアと青山さんの集中力の重なり具合がもの凄い迫力で。見ているこちらまで息を飲んで一緒に疲れてしまうくらいの緊張感を感じました。本当に素晴らしかったです!
青山 ありがとうございます、嬉しいです(笑)。
――青山さん=ネイアはこの長い映画で、ほぼ出ずっぱりですよね。
青山 完成した映画を観た時、他の作品なら絶対にリテイクになりそうなくらいに声が出ていないシーンもありました。でも、そのシーンはその”声”でないとダメかもしれない……私自身の収録の疲労感と作中のネイアの疲労感が合致して、奇跡が起きたシーンだったような気がします。でも、収録は本当に大変でした。
――瀬戸さんが演じるシズはどんなキャラクターでしょうか。
瀬戸 シズは無表情で寡黙な戦闘メイド、そしてむちゃくちゃ強い子です。戦闘メイドチームの「プレアデス」では末っ子的なポジションの妹キャラですが、今回はネイアに対して「お姉さん」的な立ち位置で接したり、それがまんざらでもないらしくて嬉しそうな表情も見せたりして。ネイアのおかげでシズの新しい面も見ることができた気がします。
青山 シズはネイアの人生の中で、あまりにも異質な人ですね。感情が感じられない人って、ネイアの周りにいなかったんじゃないかと思います。レメディオスという感情の激しい人がいつも側にいたし(笑)。
瀬戸 そうですね(笑)。
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寡黙なシズの
優しさにも注目
――ネイアとシズはアインズの命令を受けて、共にとあるミッションに挑みます。二人のやり取りは演じてみていかがでしたか?
瀬戸 シズとしては、ネイアの熱量に引っ張られないようにするのが大変でした(笑)。シズはずっと凪いでいるので。
青山 逆にネイアとしては、おっしゃるとおりシズがずっと凪いでいるので”のれんに腕押し”の感覚でした(笑)。でも、だからこそネイアが落ち着いて過ごせるというか。必要以上に接近しないけれど突き放しもしないというシズの佇まいが、ネイアにとっては救いだったのかもしれないですね。一緒に行動していく中でネイアのシズに対する目線は変わり続けますが、ネイがどう変わろうがシズは変わらない。それが居心地がよかったのかな、と。
瀬戸 対照的な二人だけれど、実は負けず嫌いなところなどは似ていて相性がいいのかもしれない。シズも何となくネイアのことが気に入ったようだし、二人で共闘するシーンのコンビネーションは見応えがあります。
青山 それから、自分でも経験があるのですが、シズのようなキャラクターを演じるのってもの凄く難しいんです。無表情で「棒読み」と呼ばれるニュアンスって実は、誰も棒読みで演じていない。動いている心に蓋を被せているだけで、動きはあるってことや、その蓋がどのくらい重のかも表現しなくちゃいけないんですよね。そこを瀬戸さんは本当に巧みに演じていらっしゃって。一緒に収録しながら「凄い……」って思っていました。
瀬戸 嬉しい(笑)。今、ネイアにとってシズは居心地の良いって言ってくれましたけど、シズってとんでもないキャラたちが登場する『オーバーロード』の中では、比較的良心を持っていると思うんですよ。雰囲気はクールだけれど自然と優しい行動が取れるし、そこに打算や損得勘定も感じないから、優しくされた側は居心地が良いんじゃないかな。そんなシズの魅力がネイアにはまっすぐ受け取ってもらえたから、シズも嬉しかったんじゃないでしょうか。
青山 『聖王国編』は全体にシリアスな雰囲気でネイアもピリピリしているシーンが多いですが、シズのおかげでネイアの素の部分も見ることがでたし、結果的に二人で姉妹のような関係性になれて嬉しかったです。ぜひ、別の作品でもネイアとシズの共演が見たいですね。
瀬戸 私もいつかまた、二人でコンビが組める日を夢見ています!
――映画を楽しみにしているみなさんにメッセージをお願いします。
瀬戸 これまでも『オーバーロード』のアニメ作品を観ている人なら、きっと予告編だけで期待値が高まっていると思います。完成した映画では、本当にこんな世界があるんじゃないかと感じさせるような緻密なファンタジー的風景が描かれているので、映画館で観たらまるで自分もこの歴史の中に生きているような没入感が描かれるはずです。そして、シズも今回のように物語の軸に関わったのは初めて。シズのファンのみなさんにはぜひその活躍を観ていただいて「シズにこんな魅力があったんだ」と気付いてほしいし、「もう知っているよ!」という人にはその魅力を存分に楽しんでもらいたいです!
青山 今作でネイア役をやらせていただき、世界中で愛されている『オーバーロード』の壮大な物語に仲間入りさせていただけて光栄に思います。劇場版ならではのクオリティの高さは大きな見どころです。思わず目を覆いたくなるようなシーンもあったりしますが、それも劇場版ならではの特徴です。ぜひ映画館に足を運んで楽しんでいただきたいです。『オーバーロード』に今まで触れてこなかったという方でも楽しめますし、1回観て「なるほどね」と感じた後でいろいろ世界観を学んでからもう1回観ると、何気ないシーンがめちゃめちゃ笑えたり、面白くなってきます。そういう楽しみ方もできるので、まだ作品を知らない方も、すでに愛してくださっている方も、何度も足を運んで楽しんでいただけると嬉しいです!
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