「私の言葉などまるで気にも留めていないようでした。すると『私はおばあちゃんだからいいの、優先席で電話をしても構わないのよ』とむちゃくちゃないいワケをし始めたのです。そんな話を許すワケにはいかないと、私は彼女にぐっと顔を近づけて『身勝手なことを言わないでください』『年齢問わずルールは守るべきです』と一喝。さすがに本人もぐうの音も出ないといった感じで、彼女は静かに電話を切りました」

一部始終を見ていた周りの人たちから白い目を向けられたこともあり、その女性は次の駅でそそくさと電車を降りたと言います。

◆周りの人からかけられた思いもよらない言葉とは…

「彼女を見送った後、安心からかどっと疲れが出ました。すると周りから『あのおばあさんはかなりのわがままだ』『あなたがはっきり注意してくれたおかげで、見ていてスカッとしたよ』と声をかけられたのです。

かなり悔しい思いをしたけれど、こうして自分の気持ちをわかってくれる人がたくさんいることに胸がいっぱいになって……。まだまだ世の中捨てたもんじゃないなと思いました」

その後、近くにいた乗客から「顔色が悪い」と気遣ってもらい、莉子さんは最寄り駅まで席に着くことができたそう。

「シルバーシート」と聞くと高齢者を強くイメージする人が多いのではないでしょうか。しかし、現在は「優先席」として妊婦をはじめとする幅広い人々が利用できるようになっています。席を必要とする人がちゃんと座れるよう、日頃から譲り合いの精神を大切にしましょう。頻繁に利用するからこそ、電車内では心地良く過ごしたいものですね。

<取材・文/菜花明芽>

―[乗り物で腹が立った話]―

【菜花明芽】
ライター。ゾッとする実録記事を中心に執筆中。カフェでのんびり過ごすことが好き。