キルギスで開催されているU-20アジアカップ予選。4チームの総当たり方式で行なわれ、各組の1位と2位の上位5チームが、来年2月に行なわれる本大会(U-20ワールドカップの最終予選を兼ねる)に進出する。まずは最初の関門を突破するべく、ロス五輪世代の選手たちは、9月21日から開催地のキルギスで調整を進めている。
日本は25日にトルクメニスタン、27日にミャンマー、29日にキルギスと対戦するなかで、若き日本代表のキャプテンに指名されたのがCB市原吏音(大宮)だ。
自身と同じく2歳上の兄も大宮の育成組織出身で、U12からU18まで在籍。父は西野朗氏らを輩出した浦和西高サッカー部出身で、指導者としても2017年に母校を30年ぶりにインターハイ出場へ導いた実績を持つ。“リオン”という名前は、当時フランス1部リーグで栄華を極めた“リヨン”に由来しており、まさにサッカー一家で育った。
早くから将来を嘱望された市原は、昨季は高校3年生ながらJ2で17試合に出場。夏以降にレギュラーとなり、2種登録とは思えないパフォーマンスで可能性を示した。正式にトップチームの一員となった今季は、19歳ながら副キャプテンを任され、187センチの高さと確かな技術を武器に、最終ラインの柱としてJ3の舞台で存在感を誇示している。
経験値はロス五輪世代のなかでもトップクラス。今予選でキャプテンを任されるのは自然の流れだった。船越優蔵監督も市原について、こう話す。
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「吏音はリーダーとして、ピッチ内の監督として振る舞ってほしい。それだけの信頼はみんなからもあると思う。プレーでも自信があり、落ち着きは今いる選手の中で高い。チームがうまくいっている時は誰もができると思うけど、うまくいっていない時に力を発揮してくれる。そういう期待をしています」
本人もやる気は十分。「キャプテンになったからといって(やることを)変えるつもりはない」とし、気負わずにチームメイトとともに前に進んでいきたいと決意を口にする。
「アジアの戦いは思い通りにいかない時間や展開が想定される。全てがアウェーの環境。少なからずそういうのがある。90分間全て自分たちのペースでいければ良いけど、そんなに簡単ではない。チーム力が試される。今回だけではなく、今までの遠征で積み重ねてきた経験もあるので、僕一人で引っ張るのではなく、みんなで団結しながら戦いたい」
25日の初陣も冷静に戦うつもりでいる。会場は天然芝と人工芝が混ざった特殊なピッチで、「中途半端にボールが浮いたり、滑ったりする。グラウンドも緩い場所と硬い場所がまばらにある」とイレギュラーなボールが増える可能性は小さくない。
だが、特異な環境も前日練習で確認したうえで、市原は「相手はカウンターを狙ってくると思うし、セットプレーでの事故絡みのゴールも考えているはず。なので、特に後ろは集中を切らしてはいけないと思います。ピッチコンディションや風を踏まえて準備をしたい」という。
U-20ワールドカップ、そしてロス五輪に向けて踏み出す最初の一歩。ここで躓くわけにはいかない。日本の舵取り役を託されたリーダーは覚悟を持って、まずはトルクメニスタンとの初戦に臨む。
取材・文●松尾祐希(サッカーライター)
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