◆「筆おろし」後、障害年金の全てをつぎ込もうとする障害者も

サービスを利用する知的障害者・自閉症者・重度身体障害者のほとんどは、「筆おろし」の率が高い。

「20代前半の男性でしたが、筆おろしした翌日に、すぐに予約が入りました。だけど、14万円持っているけど、何時間利用できるかと聞くんです。初回にアセスメントを取っているので、住環境や家族の事は把握していますのでお母さんに、そのお金に心当たりがあるか?と聞きました」

青年の母親は、「障害年金2か月分」だと答えた。ショウ氏が「そのお金を使ったら生活が破綻するか」と聞くと、母親は「します」と言った。

「その予約は、良心的に、2時間(24,000円)までとお断りしました。障害者を相手にするということは、業者が良心を持っていないと、お客様の人生を左右しかねないという認識は大切です」

施設に入所している重度障害者からの申し込みもある。

「ヘルパーさんから連絡がくる時点で、施設側がNGだということが分かります。そんな時は、親戚や友だちの設定で、偽名を使って施設に入り、サービスを行うこともあります」

ベッドしかないような個室で、シャワーは使えない。キャスト・客の双方に負担がかかるが、それでも需要があるという。

◆夢精だけでは精神的におかしくなる

「重度の身体障害があり、マスターベーションをできないと、夢精するまで我慢するしかなくなります。キャストから報告を受けるのですが、そういう方は、触っただけで射精してしまいます」

性欲は人間の三大欲求の一つだ。性欲を我慢し続けることは、セックスのことしか考えられなくなり、精神にも影響が出てくる。

「中には、四国の山奥からの予約もあります。120分のサービス(24,000円)に対し、宿泊費も込んだ交通費だけで別途15万円支払う人もいます」

その15万円を支払っても解消したいという、性への渇望がある。

◆障害者だって恋もしたいセックスもしたい

「他のデリヘル店ではあり得ませんが、私は、店外デートは禁止しますが、恋人ができないことで悩んでいる障害者の対処療法の一環として、時間内で口説くことはOKにしています」

キャスト女性も、大きく分けて3種類の層がいる。

「キャストには、介護職で障害者の性の問題に関心がある人、障害者フェチの人もいます。障害者フェチの人は彼氏を探しに求人を申し込んできます。フェチにも、おむつフェチ、食事介助フェチなど様々な人がいます。そういう人がカップルになったら認めています」

実際に、1組は結婚し、2組は恋人になった。

「経済的な理由で、一般の風俗店で働いていたが、お客様からの乱暴などで、心痛める思いをしたキャスト女性も求人に応募してきます。障害者風俗ならば、風俗嬢としてのアイデンティティを保てると思って『仕事がなくても在籍させてください』という問い合わせもあります。そういう女性の受け皿にもなっています」

そんなショウ氏が目指すのは、「福祉」ではなく「ノーマライゼーション(厚生労働省も提唱している、「障害のある人が障害のない人と同等に生活し、ともにいきいきと活動できる社会を目指すという理念」)」だという。

現在のはんどめいど俱楽部の顧客層は、30〜40代が中心で、およそ15%は施設に暮らしている。コアな利用者は、障害年金を受給しながら、障害者雇用枠で上場企業などに就労している、お金がある人たちだ。

だが、三大欲求の一つである、性欲を満たすサービスは、福祉サービスとして組み入れていくことも必要ではないか。

<取材・文/田口ゆう>

【田口ゆう】
ライター。webサイト「あいである広場」の編集長でもあり、社会的マイノリティ(障がい者、ひきこもり、性的マイノリティ、少数民族など)とその支援者や家族たちの生の声を取材し、お役立ち情報を発信している。著書に『認知症が見る世界 現役ヘルパーが描く介護現場の真実』(原作、吉田美紀子・漫画、バンブーコミックス エッセイセレクション)がある。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1