[画像] 近年多発している豪雨。降雨パターンの変化は温暖化と大気汚染が原因みたい

Image: mkfilm / Shutterstock

降りすぎと降らなすぎがリフレイン。

近年は、雨が降るときと乾燥するときが極端になってきています。降るときは文字どおりバケツをひっくり返したような雨が降るし、降らないときは土壌がカチカチになるくらい降らないみたいな。

新しい研究結果によると、地球温暖化が多くの地域で雨の降り方に影響しているせいで、予測が難しくなっているようですよ。

温暖化で雨の降り方に変化

気温が上昇すると、大気中に保持できる水の量が増える(気温が1度上昇すると大気中の水蒸気が7%増加)ので、降水量も増加します。そのため、降水量の変動も大きくなります。中国科学院大気物理研究所とイギリス気象庁の科学者からなる研究チームは、1900年から2020年における5つの全球規模と8つの地域規模の日降水量データを用いて、降水量の変動を分析しました。

その結果、地球の約75%で雨の降り方が変化し、10年あたり約1.2%の割合で雨の変動が増えていることがわかりました。降水量の変動は、ヨーロッパ、オーストラリア、北アメリカ東部で特に顕著だったとのこと。

他の地域では、長期的な降水量の変動はあまり顕著ではなかったといいます。 研究チームは、その理由として、変動のランダムな変化や、データセットの誤差を挙げています。

極端化する降水量の変動が社会の脅威に

今回の研究結果は、降らないときにはより乾燥し、降るときにはより降水量が多くなることを意味しています。この傾向は気候モデルの予測とも一致しており、今後さらに悪化する可能性が高いようです。

研究チームは、このような変動の主な原因は、人為的な温暖化と指摘しています。そして、今後の気象や気候の予測を困難にし、インフラや危機管理、農業や生態系、経済のレジリエンスに連鎖的な影響を及ぼすと述べています。

日本も温暖化で降雨量が極端化

「降るときにめちゃくちゃ降る」は、日本でもよく見られるようになってきました。2020年には、気象研究所、東京大学大気海洋研究所、国立環境研究所及び海洋研究開発機構の研究チームが2017年7月の九州北部豪雨と、2018年7月豪雨を「温暖化がある場合」と「温暖化がなかった場合」でイベント・アトリビューション分析を行なっています。

その結果、2017年7月の九州北部豪雨は、温暖化した世界では温暖化がない気候条件よりも大雨の発生確率が1.5倍に、2018年の7月豪雨は同じく3.3倍になっていたといいます。

全国における降水量の推移を見ても、温暖化に伴って強い雨の発生回数が増加傾向にあります。1時間降水量50mm以上、80mm以上、100mm以上の年間発生回数は、強い雨ほど増加率が大きくなっています。

また、3時間降水量150mm以上、日降水量300mm以上などの強い雨の頻度は、1980年頃と比較して約2倍に増加しています。

将来の降水量は温暖化よりも大気汚染が鍵

ところが興味深いことに、今後は温暖化以外の要素が日本の降水量の鍵になる場合があるみたいです。国立環境研究所が7月に発表した、日本の降雨量の将来予測は、温暖化に加えて大気汚染物質の排出変化に伴う日射量の変化も考慮に入れて分析を行なっています。

結果を見ると、産業革命前比で温暖化を2度未満に抑えるシナリオでは、東アジアからの大気汚染物質排出量が急減することから日射量が増え、それに伴って地表から蒸発する水分も増えるため、日本の降水量が増加するそうです。特に今世紀半ば過ぎまで、他のシナリオよりもその傾向が強くなっています。

つまり、国際的な温暖化対策が野心的になればなるほど、21世紀半ば頃までの日本の降水量増加は極端化するというわけです。しかし、今世紀後半の降水量増加は、どのシナリオでも同じくらいになるようです。

気温上昇も大気汚染も抑えたいけど、豪雨が極端化するのも怖い。それでも、地域によっては一時的に温暖化対策からマイナスの影響を受けるとしても、長期的には温暖化対策を最速で実行する方が、世界全体への負の影響は小さくなると考えられます。

Source: Zhang et al. 2024 / Science, scimex, 国立環境研究所(1, 2), 気象庁, Hayashi et al. 2024 / SOLA

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