――今年2月には、第74回ベルリン国際映画祭で、『箱男』がワールドプレミアされました。そのとき、「出展作品の中でもっともクレイジーな作品」と称されたと。

永瀬:そうなんです。みんなで「よっしゃ!」と思いましたね。日本の文学をもとに、日本人の俳優、スタッフ、監督が日本で撮影した作品です。もちろん日本から来ていただいたお客さんもいらっしゃいましたし、ドイツ以外のお客さんもいらっしゃいましたけど、反応を見ていて「通じているな」ということと、「現代性」をすごく感じました。

◆今はスマホという箱の中の世界を生きている

――50年前の原作ですが、永瀬さん演じる「わたし」は今の現実社会と繋がっているように映ります。

永瀬:知らない世界を「面白い」と感じてもらっているのではなくて、体感してもらっている感じがしました。それこそ「わたし」になってもらっている感覚があって、同じようにビクっとされるし、同じように笑ってくれるし、同じように心の中で走っていただいているのが分かりました。「通じるんだな」と。

 それから、石井監督と久しぶりにお会いして『箱男』に取り掛かれるという話をしたときに、「箱ってコレ(スマホ)じゃない?」とおっしゃっていたんです。27年前は今のような世の中になっているとは思っていませんでしたが、今って、この箱(スマホ)の中の世界を当たり前に生きていると感じます。

◆タテの世界の映像作品に出てみたい

――たしかに、いまの人はスマホという箱を通して社会を覗いていますね。ところで、いまはスマホで映画も撮れます。そうしたものへの興味は。

永瀬:あります。そこから新しいものが生まれてくるかもしれませんからね。小学生の子が撮った作品から、すごいものが出てくるかもしれない。子どもの描く絵って大人には描けなかったりしますし。そういう意味でも、スマホという機材もそうですし、それを使うことによって、子どもが撮る映画や、もっとプライベートなものを見せてもらいたいし、それを体感したいです。もちろんフィルム撮影からも受け取ることもたくさんあると思います。

――フィルム撮影にこだわる若い人も多いですし。

永瀬:そうですね。先輩たちの過去の作品を観たり、フィルムにこだわって撮りたい気持ちも分かります。映画も写真も。あとスマホでいうと、僕はこれまでタテの世界の映像作品に出たことがないので、ぜひ1回やってみたいです。

――タテの世界?

永瀬:いわゆるTikTokのようなタテ型の映像です。僕が出てきたのは、ヨコの世界で、映像作品としてタテの世界を体感していないんです。でも今はそのジャンルの映画祭のようなものもあるし。どういう風に見えるんだろうな、どう表現するのかなと。やったことがないので、想像できなくて、興味があります。

――永瀬さんから、“慣れ”は感じられないですね。これからも楽しみにしています。ありがとうございました。

<取材・文・撮影/望月ふみ>

【望月ふみ】
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi