◆なぜか家賃が500円の物件にて…

――『事故物件怪談 恐い間取り』シリーズには、他の人たちが住んだ事故物件のエピソードもいろいろ書かれていますが、ひときわ恐かった話を1つ挙げていただけますか?

松原:3か月限定で月々の家賃が500円という3LDKのマンションです。母親と、長男、長女、次女、次男という家族構成で、長女から聞いた話です。長女は嫁いで別の家に住んでいたので、母親と3人の子が入居しました。

 もともと母親は、病気で入院していました。退院しても自宅介護が必要な状態で、資金難であるなか即入居したのですね。でも入居数日で母親は、容体が悪化して亡くなりました。残る3人で住み続けたのですが、男性の唸り声が聞こえるなど怪奇現象が頻発しました。

 さらに、お酒をまったく飲まない40代の長男が、飲酒するようになり、キャバクラにも通うなど豹変しました。なんかヘラヘラして、まともに会話もできなくなったそうです。ある日、その長男がトラックにはねられ頭を打ち、病院に運ばれました。事故の影響がないか脳を検査すると、80代の高齢者のように萎縮していると診断されました。

 とりあえず生活には支障はないとのことで退院しましたが、ほどなく転勤して家を去ります。

◆そして一家全員がおかしくなった

――家族は、あきらかにいわくつき物件と認識していたと思いますが、残った次女と次男は、どうなったのでしょうか?

松原:次女も酒を飲まないはずが、なぜか仕事帰りに缶チューハイを買って、一気飲みしたのです。それで具合が悪くなって、たまたま通りがかった50代の男性に介抱され、そのまま男性の家まで行ってしまうのですね。朝になって帰ってきたのですが、今度はその男性が、毎晩ストーカーをするのです。

 次男も警戒していたのですが、ある日、次女は連れ去られてしまいます。次男は警察に通報するのですが、次女から連絡が来て、「私たち結婚することにしました」って、そのストーカーと一緒に暮らし始めるのですね。

 その次男もおかしくなって、仕事に朝行って夜帰ってきたら、外を徘徊するようなるのです。さらに、もともと同居していなかった長女に、夜中に電話してきて「金貸してくれ」と言ってくるようになります。

 そんなおり、転勤で遠くにいた長男が帰ってきて、「今すぐ引っ越しするぞ」と。転勤で離れている間に、まともになって、あの家がおかしいと気づいたのです。でも次男が、「いや、引っ越ししたくない」と言い張って、長男も1か月ぐらい滞在すると、またお酒飲みだして、「ここがいいな」と言って、そのまま住み続けるようになりました。

 実は、この話をしてくれた長女から私に、家を引き払い次第、ここに住まないかと勧めてきたのですね。でも兄弟があんなふうになって、話が流れてしまいました。もし、そこが空いて私が住んでも、これまでの経験で耐性がついてしまってケロッとしているかもしれませんが、普段お酒は飲まないので、吞兵衛になってしまったら嫌だなあと。ここに限らず、事故物件に住んで、住人が豹変してしまう例はけっこう見聞きします。

◆なぜかくじ運が良くなる物件

――逆に、住み始めたらどんどん運勢が上がったとか、出世したとかといった、プラスの方向に豹変した例はあるのでしょうか?

松原:あります。私が取材した女性ですが、事故物件がどうか不明ですけど、マンションに住み始めて毎晩金縛りにあうと。妹さんから電話で、「事故物件じゃないの?」って言われたけれど、住み続けました。その妹さんが、マンションに来ることになったのですが、なぜか迷って、すぐそばまで来たとことで事故にあってしまいます。