女性の大学進学率は今や5割以上にのぼる。しかし地方在住の女性が地元を離れ、東京の大学に進む前にはいくつもの壁がある。「女は大学に行かなくてもいい」という旧来的な価値観、長引く不景気による経済的余裕のなさ、さらに女性は就職しても結婚や出産の影響を受けやすいため、大学進学が「コスパのいい投資」とみなされないことなど背景は複合的だ。

 そんな地方女子に課せられたハードルを見事突破し、神野は、指定校推薦枠で早稲田大学に進学した。

「学費は無利子の奨学金を得ることになりました。今も返済を続けています。生活費は仕送りしてもらいましたが、セクシー女優になってからはもらっていません」

 兄は東京に羽ばたく妹をやさしく送り出してくれた。

◆両親は「良い親」でも同時に自分は苦しかった。今は適度な距離感でいたい

「両親は、二浪した兄に気を遣いながらも、私が学校でいい成績を取って、有名大学に進学したことは『家のメンツ』になっていたんだと思います。親から期待されていることも感じていました。でも、そういうのを全部、無に返したくて。

 田舎はいい噂も悪い噂もすぐに回るから。そういう意味では私がセクシー女優になったのは、特に父にとってすごく痛手だったと思う。よく『そんないい両親に育てられて、そんな親不孝なことをできるな』とも言われるのですが、たしかにそういった反応も理解はできます」

 たしかに神野の家族は、いわゆる虐待や貧困といった機能不全家族ではないようだ。セクシー女優の中には過酷な家庭環境をくぐり抜けてきた者も少なくないが、そのようなタイプとは神野は一線を画している。

「だから私の中でもなぜ、こうなったのか、折り合いをつけるのが難しくて。両親は良い親であるのは間違いないけれど、私は一緒にいて苦しかった--そんな自分を認めてあげられるようになって、ようやく適度な距離感を保てるようになりました。一時は私も申し訳なさもあって手紙を書いていたこともあるけど、今は『無理にわかってほしい』という気持ちはないですね」
 
 親との関係性は時間とともに距離を変え、形を変えていく。長い人生、いつか親子の力関係は逆転するかもしれない。そんなことを筆者が告げると「いつか実家に帰れたら……」と神野は笑っていた。

<取材・文/アケミン、撮影/藤井厚年>

―[神野藍]―

【アケミン】
週刊SPA!をはじめエンタメからビジネスまで執筆。Twitter :@AkeMin_desu