◆意欲格差を生む“関係格差”と“体験格差”

土井氏によれば、人生を切り開こうという意欲の格差からも負の連鎖が生じるという。

「人格形成の時期において意欲を育む一番の刺激は他者との交流です。学齢期の部活動もその一端を担っている。年齢を越えた交流を得る格好の機会ですが、昨今では経済的理由で部活ができない子どもが増え、結果的に“関係格差”が意欲格差を生んでしまう」

土井氏によれば、“体験格差”もまた意欲格差を生むという。

「遊びや旅行などを通して得られる幼少期からの“体験”の蓄積も、意欲を育む貴重な土壌になります。しかし昨今では、何をして遊ぶにもお金がかかる。体験の機会を十分に得られない子どもは、リアルな世界の刺激に触れて意欲を育む機会を失ってしまう」

一方、ここにきて新たな貧困層が拡大する可能性がある。

「今の日本では、株価や物価の上昇もあり、社会の平均的な人々と比べて相対的に貧しい人々が生まれやすい状況にあるともいえる」(土井氏)

生まれた家庭環境でその後の命運が決まる親ガチャ貧困。子どもが自らの手で悪しき負の連鎖を断ち切る日は来るのか。罪なき若者の犠牲で成り立つ日本の明日はどっちだ。

【社会学者 土井隆義氏】
筑波大学人文社会系教授。専門は社会学、刑事法学。若者の逸脱行動に関する研究を行い、トー横キッズの問題にも詳しい

取材・文/週刊SPA!編集部

―[[親ガチャ貧困]の実態]―