[画像] 中国発の大作アクションRPG「黒神話:悟空」レビュー!「西遊記」を題材にした世界で、多彩なフィールドでの冒険や如意棒・術を使った爽快なアクションが楽しめる

2024年8月20日にPS5・PC向けに発売されたばかりの「黒神話:悟空」(以下、黒神話)。本作は中国の古典小説のなかでも「四大奇書」のひとつに数えられる作品「西遊記」を題材にしたアクションRPGだ。

本稿では、本作をプレイしたうえでのレビューをお届けしよう。

プレイヤーは「天命人」として、斉天大聖復活のための旅に出る

 

 

 

天竺を目指す旅から戻った孫悟空が、顕聖二郎真君と壮大な戦いをくり広げるところから本作のストーリーは始まる。激闘の末に敗れてしまった悟空が落ちたところには、大きな石だけが残った。そこから数百年の歳月が経ったころ、主人公は長老からの命を受け、斉天大聖を復活させるために必要だと伝えられる6つの霊宝を求める旅に出る。

 

 

本作の主人公

 

本作は最新のゲームエンジンである「アンリアルエンジン5」を採用している。ちなみにゲームエンジンとは、「ゲーム制作用開発プラットフォーム」のこと。「アンリアルエンジン5」で開発された本作は、この現実にも劣らぬ写実的なグラフィックでフィールドが表現されている。主人公の装備や、敵が動いて波立つ水面、竹林の隙間から差し込む光など、あらゆる部分が精密に描かれ、プレイヤーの没入感を高めている。

 

 

メインストーリーはチャプターごとに区切られ、各章では竹林が茂っている山や砂漠に覆われた荒野など、多彩なフィールドが登場。いずれも構造は1本道で、最終的にたどり着くルートは限定されているものの、その代わりに各フィールドには大小さまざまな寄り道があり、奥にボスが待ち受けていたり、隠されたフィールドに向かうためのギミックがあったりと、なにかと発見がある。

 

本作では落下死という要素がないため、断崖や古い木で組まれた通路など、一歩間違えれば落下しそうな場所も気兼ねなく探し回れる点もうれしい。リアルなグラフィックの都合上、「黒神話」は行ける場所と行けない場所の区別がつきにくいため、こうした措置はありがたい。欲を言えば、行き止まりを示す演出があれば、より探索が便利になるのではないかとも思った。

 

 

 

ゲーム内のテキストも充実している。ストーリー中で戦ったり出会った相手の情報は図鑑のようなものに登録されるのだが、情報量がとても多い。その妖怪がどのような存在で、かつて天竺を目指して旅をしていた三蔵法師や孫悟空とどう関わったのかなどもていねいに書かれており、非常に読みごたえがある。翻訳にはかなり力が入っているようで、ストーリー中のセリフはもちろん、図鑑内の文章は自然な日本語に整えられており、とても読み解きやすかった。対象の背景を知るのに役立つのはもちろん、「西遊記」を知る人であればより楽しめるだろう。

 

 

 

順路だけを追うプレイスタイルなら各章のボリュームは3,4時間くらいと程よい感じだが、隠されたギミックやアイテムの収集、武器や装備の鍛造に使う素材探しも余さずこなしていくのなら、本編をクリアするまで数十時間はゆうに楽しめそうだ。

伸縮自在の棍を中心とした、爽快感バツグンの戦闘システム

 

 

主人公である天命人の武器は棍(つえ)。威力は低めだがすばやい連続攻撃が可能な「軽棍」と、威力は高いが動作が遅い「重棍」の2種がメインで、軽棍によるコンボで敵を圧倒しつつ、機を見て重攻撃を叩き込む、というイメージだ。また本作には防御がなく、相手の攻撃は基本的に避けることになる。

 

重棍をくり出す際は「棍勢」が必要で、棍勢はプレイヤーが攻撃を当てたり、相手の攻撃をギリギリで回避する「瞬身」などを成功させたりすると徐々にたまっていく。重攻撃ボタンを長押しすれば、スタミナである体力を消費する代わりに棍勢を一時的にためることもできる。

 

 

さらに、棍を使った攻撃には複数のスタイルがあり、「劈棍の型」、「立棍の型」、「刺棍の型」の3種類が存在。劈棍の型は移動しながら混勢をためられるため機動力に富み、立棍の型では溜めを利用すると、伸ばした棍の端によじ登り、敵の攻撃を高所で避けつつ専用の攻撃に移行可能。刺棍の型では離れた敵に伸ばした棍を突き立てられるため、安全な場所から攻撃ができる。

初期は劈棍の型のみだが、ストーリーを進めると立棍、刺棍の両型も解放され、習得してからはいつでも自由に切り替えられる。劈棍の型を使って高速で立ち回りつつ、相手の攻撃に合わせて立棍や刺棍の型の専用技で対応、というコンボが成功すると気持ちがいい。

 

 

棍と並んで主力となるのが「神通」。いわゆる魔法のようなもので、神通には「奇術」をはじめとする4つのカテゴリーがある。奇術の一種である「定身術」は、ロックオンした相手の動きを一時的に止めることが可能。シンプルながら強力な術で、止まった敵にコンボを叩き込んだり、強力な技をしてくる敵に使って逃げるまでの時間を稼いだりと、使い勝手がとてもいい。

 

さらに、これまで倒した一部の敵に変身して攻撃する「変化」のほか、体を硬化して敵からの攻撃をはじく「金剛術」や、透明になって敵から逃げられる「気行術」などを含む「身法」、加えて分身して敵を一気に攻撃可能な「分身」があり、戦闘中に取れる手段の数は圧倒的だ。神通はとても強力だが、「法力」というゲージを消費し、さらに発動後は再び使えるようになるまで時間がかかる。使いどころを見極めるのが重要だ。

 

 

神通のなかでもとくに強力なのが変化だ。今回プレイした範囲では、ボスの広智を倒すと手に入る「狼」を入手できたのだが、攻略するうえで非常に重宝した。一定時間ボスになって行動できるため、普段とはひと味違う広範囲で高威力の技をくり出せるだけでなく、主人公状態と変化状態は生命力が別々なので、ピンチになったら変化を使い、狼の姿になって敵の攻撃を耐えるという戦法も取れた。攻め時から起死回生の一手としてまで、便利に使える術と言える。

 

 

棍を用いた物理攻撃に、神通による攻撃から回避まで可能なバリエーションに富んだ術の数々、プレイヤー側にさまざまな選択肢が用意されているため、ザコ、ボスを問わずとても戦いやすい。道中にいるザコであれば、軽攻撃と重攻撃を使っているだけですぐに倒せる。

 

ボスはザコと比べてHPも多く、攻撃も激しいため一筋縄ではいかないが、軽攻撃のコンボの最後にくり出す一撃や、棍による各型の重攻撃には敵を怯ませる効果があるので、しっかり決められればボスでさえも一方的に攻撃できる。ここに定身術による拘束、分身して敵を袋叩きにできる分身も加えられると、より攻撃的な戦術も可能。

今回のレビューでは十数時間ほどプレイした程度だが、全体的にボスは3Dアクションに親しんでいるプレイヤーなら、程よい強さ。アクションゲームが得意な人なら初見で撃破できることも多いだろう。

 


なお、本作ではHPである「生命力」がゼロになるとゲームオーバーになり、最後に利用した「祠」に戻される。祠はフィールドの各地にあるチェックポイントのようなものだ。ボスにやられた場合、祠で復活した後はもう一度相手のいる場所まで行く必要があるものの、戦闘不能に伴うペナルティはない。本作では敵を倒して得た経験値が一定に達すると「妙悟値」がひとつ溜まり、後述するスキルの習得に利用できるのだが、その経験値を失う心配がないという親切な仕様はありがたかった。

妙悟値を使ったスキル習得や装備品の組み合わせで主人公を強化

 

 

「黒神話」では、主人公の戦う方法だけでなく、強化するための手段も豊富に用意されている。妙悟値がたまっていればスキルツリーでスキルを覚えられるのだが、覚えるスキルによって、HPである生命力、神通に使う法力、攻撃や移動など各種行動に必要な体力といった基本ステータスを伸ばしたり、棍の3つの型に新たな技を習得できたりできる。

 

すでに書いたように、敵にやられて祠で復活しても、プレイヤーが負うペナルティはとくにない。経験値は失われないため、倒せない敵がいれば経験値をひたすらためて妙悟値を増やし、スキルをどんどん覚えるといった力押しの打開策も可能だ。祠で「休息」を選ぶと、生命力と法力、そして回復アイテムである瓢箪の使用回数が最大まで回復するほか、ほぼすべての敵が復活する。つまり経験値稼ぎもしやすい。

 

 

ほかにも、頭部、胴体、腕、脚にはそれぞれ防具がある。防御力が上がるのはもちろんだが、同じカテゴリーの防具を一式装備すればセット効果が発動し、専用の強化が得られる。一定時間走りつづけると攻撃力が上がるなど、さまざまな効果があるため、装備を付け替えて主人公に付与する強化をカスタマイズするのもおもしろい。

 

装備は基本的に祠で選べる「装備鍛造」で作成するのだが、求められるものは敵を倒して入手したり、道中で採取できる植物が大半。本作の戦闘はスピーディーであり、さらに探索していれば植物も自然に目に入るので、戦闘と探索をこなしてさえすれば、素材が不足するということはあまりなかった。

 

 

「西遊記」を題材にした壮大なストーリーとあわせて、本作では棍と神通を使ったバリエーションの豊富な戦闘や、リアルなグラフィックで表現されたさまざまなフィールドの探索などが楽しめる。死ぬたびに祠で復活して再挑戦、という点を聞くと難しそうな印象を受けるものの、実際はゲームオーバー時のペナルティはなく、そのために経験値を稼いで妙悟値を獲得、スキルを習得するという一連の育成が滞る心配はない。主人公を強化しまくる力押しも可能であり、強力な神通を使いこなすことで敵との戦いでは優位に立ちやすくなる。本作はアクションゲームが多少苦手なプレイヤーでも、主人公を成長させることで遊びやすい難易度に調整できるアクションゲームと言えるだろう。

 

死んで覚えるのが前提の「死にゲー」は厳しいが、やり応えのあるアクションゲームを遊びたい人を始め、アクションRPGや壮大なスケールのゲームに興味がある人にも、自信をもってオススメできる1作だ。

【タイトル情報】黒神話:悟空対応機種:PS5 /PC(Steam)発売日:2024/8/20ジャンル:アクションRPG価格:通常版 7,590円(税込)デジタルデラックス版 8,580円(税込)メーカー:Game Science Interactive Technology Co., Ltd.

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夏無内好

活動歴約10年のフリーライター。専門学校を出た後、大手のゲーム雑誌の記事作成や編集プロダクションの攻略本作成などを経験。週刊誌での長期連載やプレスリリースのリライトも経て、最近はアキバ総研などのウェブ系でも執筆を始める。 基本的に雑食で、RPGからアクション、シミュレーションやFPSまでなんでもやる。


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