◆それでも発信を続ける理由は…

 恐怖体験を経たあとも、変わらず各種SNSを通じて世の中に発信をしている。傷つく可能性がありながら発信を続けるのはなぜか。

「世の中にはさまざまな人がいて、こちらの善意を利用してくる人もいるのだということを学びました。ただそれでも、私は多くの人に励まされてきたから、私の発信で救われる人がひとりでもいるなら、続けたいなと思っています。知能指数が平均よりもだいぶ低いことは不安が多いですが、それによって世の中が嫌いになったり、やりたいことに挑戦するのを留まるほうが、私にとっては辛いんです」

 えりかん氏の視線は常に前に向かってまっすぐ注がれている。人に裏切られ、騙されても、厭世的になって斜に構える素振りすら見せない。

 偏差値、年収、フォロワー数――自分にまとわりつくあらゆる数字を誇ろうとする人間が多い中で、その凹みすら開示するあけすけさで応援される彼女の軽やかさに、数値化できない真の強さを感じる。

<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki