◆芸能活動の目的は「自己価値の最大化」(神谷)

三輪:グラビアに関していうなら、自分自身が弁護士として下着姿でプレイボーイに出ているところを想像したら、それだけで「面白い」と思ってしまって。現場でも脱ぎっぷりが良すぎて、「初めてなんですか」って驚かれたぐらいです。

神谷:面白いかどうか……(笑)。それで物事を選択できるのは、とても素敵なことですね。グラビアは、男性が女性を性的に消費するためのものという側面もあると思います。仕事への実益を抜きに、またグラビアのオファーを受けることがあれば、やりますか。

三輪: やります。私はシスジェンダー(割り当てられた性が女性で、性自認も女性)で、ヘテロセクシャル(異性愛者)というマジョリティ属性、男性から「性的に見られたい」という欲求も多少はあります。だけどそれよりも「攻撃は最大の防御なり」という発想の方が大きいです。男性から性的な視線に晒されるって、女性側からすると基本は受身じゃないですか。そういう選択権が自らの手元にないというような考え方が嫌なので、反転して能動的にしたいんです。性的客体ではなくて、自分自身が性的主体でいたいんですよね。

――三輪さんを知らない方のために補足しておくと、たとえば三輪さんの夫である作家・樋口毅宏さんの著書『おっぱいがほしい!』では、結婚後に街中で三輪さんの元セフレと遭遇したエピソードが紹介されていたり、独身時代は“性豪”だったことで知られています。

神谷:そうなんですね。私には、三輪さんのような欲求や発想は希薄かもしれません。普段の生活では、メイクもせず、スウェットで体型が出ないような地味な服を着てるんです。公の場で大勢の人から脚光を浴びること自体は好きなんですが、それと普段の生活とは切り離して考えていると思います。

三輪:それなら、神谷さんはどうして芸能活動をやっているんですか。

神谷:とくに学生のうちに、自分の価値を最大化するためです。芸能界は若さに重きが置かれがちなので、大女優にでもなれない限り、タレントとしての寿命は長くありません。それなら学生のうちに自分の能力をどこまで生かせるのか最大限試して、生きた証を世の中に残したい。その目標に照らしてメリットとデメリットを考えた上で、仕事を受けるか判断しています。その意味で、私は三輪さんより打算的かもしれません。

◆学業と芸能の「二足の草鞋」をなぜ履くのか?

――研究や起業の世界で、同じように「自己価値の最大化」を目指すという道もあるように思います。学業と芸能活動、あえて「二足の草鞋」を履いているのはなぜですか。

神谷:学業でも芸能でも、どちらの世界でも一番を目指したいという気持ちが大きいからです。社会に出て学ぶ経験は必要だと思うので、大学院修了後は民間企業への勤務も考えています。社会課題を解決するソーシャルアントレプレナー(社会起業家)にも惹かれますね。その上で、芸能で得た影響力を事業や会社に生かせるのなら、芸能活動を続けることを検討したい。仕事である以上は芸能にも絶対に手は抜かないと決めていますが、そういう意味では芸能以外の仕事ありきで考えている部分があります。三輪さんの場合、芸能活動をどう位置づけられていますか。

三輪:私の場合、1つには、日々の弁護士活動を通して感じていることを発信するという目的があります。今は離婚・不倫関連の案件や、犯罪被害者の案件などを担当しています。日々の案件に一つひとつ向き合う中で、共通して見える社会の課題や法制度の矛盾というものがある。それを言葉にして公共に投げかけることには、意義を感じています。