「僕は家を解約し、会社に泊まり込みでコミット。詐欺団体から殺害予告を受けるなど大変なこともありましたが、事業は順調でした。しかし、2018年に起こったコインチェックのハッキング事件でビットコインバブルが崩壊。突然、メンバーの半分が会社を去るという危機的状況に陥ってしまったんです。

仮想通貨一本ではなく柱がもうひとつ必要だと考えた僕は、こんな悪状況でも仮想通貨を信じて情熱を持ち続けていた文字通り“コインオタク”なインターン生に事業を託し、新たに『Senjinホールディングス』というマーケティング企業を設立。この判断は大正解で、コインオタクは新代表のもと1年間かけて大幅にバリューアップ。結果的に、6億円で上場企業へと売却するに至りました」

◆「1万年後の生き物を驚かせる作品を」藝大に進学した動機

コインオタクの売却に成功し、Senjinホールディングスの事業も好調。そんな中でも、誰もが予想しないような挑戦を続けるのが下山氏のクレイジーな点だ。東京大学を卒業したのち、なんと今度は「芸術界の東大」とも呼ばれる東京藝術大学大学院への進学を決心する。

「コインオタク売却後、いい家に住んだり、恋愛バラエティーショーに出演したり、ぼんやりと憧れていたことをして過ごしていました。でも、後輩から『オフィスに泊まり込みで仕事をしていた下山さんがかっこよかった』と言われ、我に返ったんです。

そんな時、偶然仲間たちと無人島に行く機会がありました。どうせならと釣竿と水だけ持って2泊3日のサバイバルに。極限状態に陥った時、ふと砂浜に絵を描いている自分がいることに気付きました。事業とアート作品を作りながら未来を考えられたら絶対面白いし、藝大での経験はきっと事業にもプラスになる。そうして、藝大大学院の受験を決意しました」

藝大の試験では、仮想通貨や広告をテーマにするなど、これまでの経験をフルに活かした作品を提出し見事合格。事業にもアートな側面が大いに役立っている。

「僕の夢は、1万年後の生き物がびっくりするような作品を作ること。そのために、コインオタクの売却資金で山を購入し、そこでオブジェの製作を進めています。また、太陽の塔のように後世に残る作品を作るには大きな組織とのコラボが必要不可欠です。

そこで、Senjinホールディングスの事業の一環として『ALT.』というアート部門も設けました。上場企業や省庁と共同で作品制作を行い、芸術と経営を結びつけるワークショップを実施。現在は、経済産業省大臣室に作品を献呈したり、ASEANサミットでアートのプログラムを提供したりさせていただいています」

藝大を卒業後、今度は慶應の博士課程に進学。アート×経営について新たに学び直すなど抜かりがない。「デジタルマーケティング、人材、地方創生、アート事業の4つを柱とした活動を通して、世界の進化を早めていきたい」。そう語る下山氏の次なるチャレンジに、ひと時も目が離せない。

取材・文/桜井カズキ 撮影/ヤナガワゴーッ!

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