現在のイラクにあたる地域で見つかった約4000年前の粘土板が解読され、「月食を前兆とする王の死や都市の没落、疫病」といった凶事について記されていたことが判明しました。
Old Babylonian Lunar-Eclipse Omen Tablets in the British Museum: Journal of Cuneiform Studies: Vol 76
https://www.journals.uchicago.edu/doi/abs/10.1086/730483
'A king will die': 4,000-year-old lunar eclipse omen tablets finally deciphered | Live Science
https://www.livescience.com/archaeology/a-king-will-die-4-000-year-old-lunar-eclipse-omen-tablets-finally-deciphered
今回、ロンドン大学のバビロニア語名誉教授であるアンドリュー・ジョージ氏らの研究チームは、現在のイラク・バグダード県にあったシッパルという古代都市から発掘された4枚の粘土板を調査しました。シッパルには5000年以上前から人が居住しており、長らくバビロニアの宗教上重要な都市として繁栄し、多数の粘土板が出土しているとのこと。
この粘土板は古バビロニア時代にあたる約4000年前のものとみられており、1892〜1914年に大英博物館のコレクションの一部となりましたが、刻まれている楔形文字はこれまで解読されていませんでした。
楔形文字を解読した結果、粘土板には「月食を前兆とする凶事」について記されていることが判明しました。月食の後に起こる凶事は、月食の時間や月食が起こる場所、月食の様子などによって異なっていたとのこと。
たとえば、ある部分では「月の中心から一気に見えなくなり、一気に晴れる月食の場合:王が死に、エラムが滅びる」と記されていました。エラムは現代のイランを中心とする地域を指しており、月食が大規模な凶事の前兆であることを表しています。
また、別の部分では「南で始まり、その後晴れる月食の場合:スバルトゥとアッカドが没落する」と記されていたほか、「夕方に見える月食:疫病の予兆である」という文章もありました。
これらの記述についてジョージ氏は、「いくつかの前兆は、大災害に続いて月食が観測された、実際の経験に基づいたものかもしれません」と述べています。しかし、ほとんどの前兆は月食の特徴をさまざまな現象に結びつける、理論的なシステムによって定められた可能性が高いそうです。
バビロニアや古代メソポタミアでは、空で起こる出来事は神々からの隠されたサインであり、神々はこれを通じて地上の人々に警告しているのだと考えられていました。研究チームは論文に、「王に助言する者たちは夜空を見張り、その観測結果を学術的な天文予言書と照らし合わせていました」と記しています。
ある天文イベントが「王の死」といった凶事の前兆だった場合、人々は動物の内臓を使った「extispicy」という占いで、本当に王が危険にさらされているかどうかを判断したとのこと。なお、extispicyによって凶事が迫っているとわかった場合でも、特定の儀式を行えば回避できると信じられていたと、研究チームは論文で述べました。
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