「てっきり普通の格好で踏み込むのかと思ったのですが、警察の皆さんが防護服にマスク、水中眼鏡、そして盾を持って突撃しました。すると部屋の中にいた犯人が、なんと“熊よけスプレー”を部屋いっぱいに撒き散らして逃亡を図ったんです。前回はこれで逃げられたそうなので、警察もしっかり対策を練ってのことだったそうです」

◆修繕に「300万円」かかってしまった

その後、逃走犯は無事にお縄になり連行されていったそうだ。しかし、スプレーには唐辛子成分が含まれていたため、部屋に入るだけで目が真っ赤になるような状態に。そのため、部屋はしばらく使い物にならなかったという。もちろんこのようなことが起こってしまえば、修繕に時間とお金がかかるため、部屋を稼働できずに儲けを出すことができない状況に。

「しかも、部屋を直すために300万円くらいかかりました。警察の方で修理にかかった日数に出るはずだった利益を計算してもらい、捜査協力費と弁償代として支払っていただきました。また、残りの分は保険が出たのでなんとか修繕はできましたが、もうこのようなことは本当にこりごりですね。二度と起こらないでほしいです」

◆入室10分で退室…さまざまな珍客たち

多くの人間ドラマだけでなく、さまざまなアクシデントの現場にもなってしまうラブホテル。軽微な事案から重大事件まで、対応を余儀なくされてしまうのもラブホテルならではの問題だ。他にも、事件性などは一切ないが変わった客が来ることも多く、「一体何をしているのだろう」と首を傾げることもしばしばあるとか。

「常連のお客様のなかに、一人で入室して10分ちょっとで出て行かれる方がいらっしゃいました。何ができるかわからないほどの短時間なのに、ベッドは乱れているし、お風呂は湯船までいれてある。ゴミ箱に使用済みの避妊具も捨ててある。わざわざお金を払って部屋に入り、一体何をしているのでしょうね。

また、他には郊外の田んぼの中にポツンと建っているホテルに、1日に4〜5人の男性を連れて来店される女性のお客様がいらっしゃったりします。きっと売春をしているのでしょうが、どこで出会って連れてくるのかが皆目わからなかったですね。都会のホテルならまだわかるのですが、田舎だったこともあってとても不思議でしたね。」

このような不思議な利用をする人たちは、どこのラブホテルでも少なからずいるそうだ。人気のあるホテルであれば、人の出入りが激しくなる分、さまざまなタイプのユーザーが来店することになる。いわば普通の人から、意味不明な使い方をする人、警察から逃れるために立て籠る人まで……。ラブホテルは、常に人間模様に溢れている現場だ。

<取材・文/越前与 写真提供/株式会社スパイラル>

【越前与(えちぜんあたる)】
ライター・インタビュアー。1993年生まれ。大学卒業後に大手印刷会社、出版社勤務を経てフリーライターに。ビジネス系の取材記事とルポをメインに執筆。