最後に残ったのがスズキ。身質が他の魚よりざらっと粗い印象で、筋の入る間隔が広め。クセがなくさっぱりとした食感だが、もちもちとした特有の歯ごたえがある。

◆わかりにくい青魚カンパチ、ブリ、ハマチの判別

続いて、背の青い青魚の判別ポイントは以下である。

カンパチ(養殖):身は透明感のある白色。白身魚っぽいが血合いでカンパチとわかる。養殖もののため、皮下脂肪のような薄い脂の層があり、脂が染み出している!

ブリ(天然):ブリが大きくなったもの。身はピンクから赤色。

ハマチ(養殖):ブリの若魚。身はやや白っぽい。若いのでブリより血合いが多い。こちらも養殖ものなので皮の下に脂の層がある。

カンパチ、ブリ、ハマチは、スズキ目アジ科の同じ仲間です。ブリは成長段階によって名前が変わる出世魚で、若魚はハマチと呼ばれる。大きさによる呼び名はさらに分かれており、ワカシ→イナダ→ワラサ(関西ではハマチと呼ぶことも)→ブリとなる。

ブリはかなり大きな魚であり、野本氏によると「天然のブリは自分が見た限りで最大のものは20キロです」とのこと。最近はまとまって大漁に獲れることがあるため比較的安価であるが、養殖地域はどんどん拡大しているとのこと。

「1980年代、ブリの稚魚であるモジャコの採捕も盛んに行われ、エサのイワシも安価に使えました」と、野本氏。

◆「魚食文化」を次世代に繋いでいくには…

余談だが、カンパチ、プリ、ハマチの集合写真を知人の料理人などに見せたところ、ブリとハマチはさすがの的中率であった。しかし、カンパチを「シマアジ……?」と2名が回答した。惜しい! 確かに、カンパチとシマアジは切り身になると見分けがつきにくい。どちらも身が引き締まっており、断面がくっきりとし、断面の「エッジ感」が似ている。

日本はかつて豊富な魚介類を自給していた国であったが、現在では多くの水産物を輸入に頼っている。背景には、気候変動や国内の漁獲量の減少や漁業者の高齢化など、さまざまな問題がある。

魚離れも進む一方だが、刺身や寿司を見ると、魚の個性や魅力は格別と思わずにいられない。伝統的な食文化をあらためて見直し、次世代に引き継いでいきたいものだ。

<取材・文/木村悦子 取材協力・羽田市場

【木村悦子】
フリーの編集者・ライター。出版社勤務後、編プロ「ミトシロ書房」を創業。実用書やガイドブックの企画・編集を行う傍らで、Webライターとしても活動。飲食・日本文化・占い・農業など、あらゆることに興味があるが、生き物が大好きすぎて本も書く。『日本で会えるペンギン全12種パーフェクトBOOK』、『ラッコBOOK』を執筆。