超高齢社会に突入し、日々孤独死が増えていっている。2023年の警視庁のデータによると、年間約6.8万人は自宅で孤独死を迎えることになるという。
 都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに孤独死後の特殊清掃作業について話を聞いた。

◆防護服の姿のまま外に絶対出ない

 孤独死現場を清掃する時に心がけていることは、近隣にここで人が孤独死したという事実を悟られないようにすることだ。

「人が死んでしばらく経った現場だと、感染症対策やニオイ対策で防護服を着るのですが、その姿で外には絶対に出ないようにしています。見た目が特徴的なので、誰かに見つかると、ああここで人が死んだんだなと悟られてしまう。なので、先に消臭や腐乱場所の清掃など、防護服を着てやる清掃作業を終わらせて、遺品整理の時には外にいろいろ運ぶことも多いので、防護服を脱ぐように心がけてます。

 依頼主や物件の持ち主が1番嫌がることって『あそこは事故物件だ』という噂が不必要に流れてしまうことです。不動産価値も下がりますし、事故物件公示サイトにのるのを避けたいと言う声が多いです」

◆夏はニオイが漏れるので発見されやすい

 依頼主が不動産オーナーの場合は完全に隠密でやってくれという指示があることも多い。孤独死の現場だけで1日に来る見積もり依頼の件数は平均3〜4件、多い時で7〜8件になるという。

「夏場になると特に依頼が増えます。死亡者数のグラフを見ていると、夏場に死亡者数が増えているわけではないですが、冬の場合は死体が腐敗しにくく発見が遅れます。夏場は共用部分など、すぐ外にニオイが漏れてくるので、発見されやすいということですね」

◆遺品整理をして「病みそうになったことも」

 孤独死が起こった時の流れとしては、まず遺体が引き上げられ、警察の現場検証が始まる。その後、立ち入りの許可が出たら特殊清掃業者が入る。しかし、腐乱死体の後始末をする業務によって従業員の精神に悪い影響はないのだろうか。

「うちの従業員でいうと、精神が不安定になった人はいないですね。基本、求人はYouTubeを見て応募してきてくれる人が多いので、覚悟ができているというか。10年くらい前は特殊清掃業者が浸透していなく、孤独死が起きた家って、誰に何を頼んで清掃してもらえばいいかがわからなかったと思うんですよ。なので、街の便利屋やハウスクリーニング業者や内装リフォーム屋にお願いしていたのです。本当はやりたくないですが、泣く泣く請け負っていたようです。

 いつもはビルの掃除とかをしていた業者の方々が、突然、腐乱死体現場を清掃させられる。そういうパターンでは精神的におかしくなった人はいたのではないかと思います。人型に染み込んだ体液の処理やこびりついた髪の毛の処理、強烈なニオイ……病んでしまう人がいるのは想像できます。僕も遺品整理をしていて、亡くなられた方の生活と自分の生活を重ね合わせてしまい、病みそうになったことは何度もあります」

◆どうして特殊清掃でニオイが取れるのか?

 床に染みついた人型のシミなどは建物の構造によってはかなり清掃しにくい場合があるという。

「腐乱場所の掃除の仕方でいうと、まず体液があった場所を掃除して洗浄をかけてキレイにするんですけど、それでもニオイが取れなかったりすると部分的な解体工事をするんですよ。例えば、フローリングをマルノコやノコギリを使って解体するのですが、フローリングを取るとベニヤ板の下地が出てくるのが定番なんです。でも、そこがコンクリートだった場合はかなり面倒臭いです。まず表面を綺麗にして、そのあと上から消臭をして、さらに塗装して油膜で密封する。