投資詐欺で一度に300万円失う

 他方、とても痛い目にも。

「海外の未公開株にも手を出しました。それは、東南アジアのインフラ系企業の株。日本の証券会社や銀行では扱っていないもので、知人経由で紹介されました。その人は、投資で成功し、資産を持っているほうだったので、自分も早く増やせるのではと期待したのですね。100万円ずつ3回に分けて、合計300万円、指定された香港の銀行口座に振り込みました」

 しかし、それは投資詐欺だった。

「元手が10倍ぐらいになるかと、心わくわく躍らせながら待っていました。でも、なんの音沙汰もないし、関係者たちは海外に移住してしまって、連絡が取れなくなってからやっと、詐欺だと気づいたのです。せっかく働いて得たお金が一気になくなってしまって、本当にやばいと焦りました。投資をやめる気はなかったのですが、その前に自分のマネーリテラシーを上げていかないと、いけないと実感しました」

◆王道中の王道とされる投資法とは?

 二度と後悔しないと決意を新たに、櫻井さんは、素性の確かな人物が運営する投資スクールで学び始める。そのうえで、上場企業数十社からなるインデックス投資信託と米国株で再スタートを切った。

「これは、王道中の王道とされる投資法です。最初は月々2万円ほど、1年で約24万円という堅実投資です。堅実ゆえ、急速には増えません。なので、しばらくしてから、毎月入ってくる給与の4割ぐらい、そして賞与が入ったときは、それをほとんどつぎ込みました。日常の生活費の支出の見直しもしました。それで、36歳になってFIREできました」

 これだけだと、FIREは結構ラクにできると思われそうだが、そうではない。櫻井さんは、リスクはあっても、勝負には何回か出ている。

◆王道の投資法から始めてついにFIRE

「コア・サテライト戦略と呼ぶのですが、運用資産のコアとなる8割はリスクの少ない投資に振り分け、残り2割でトレード、暗号資産、個別株に充て、そこでは勝負しました。あと、外貨投資もして、円とドルを半々ぐらい保有しています。ドルが100円台のときに、かなりの額をドルに変えているので、160円前後になった今、為替の差益は得られています。

 また、コロナ前に、景気後退か何か、そろそろやばくなるだろうと思い、分散投資して現物資産を増やそうと考えました。具体的には不動産や金(きん)ですね。不動産はマンションで、初期投資がかなりかかりますが、当時は会社員だったのでローンが組めました。そのマンションは、去年売却しました。それで得たお金で米国株をさらに買いました。これだけやって、投資だけで暮らしていけると確信を得て、会社を辞め、今に至ります」

 経済的自由を得て退職した櫻井さんは「一度きりの人生なのだから、経営とかもチャレンジしてみたい」と考え、マネースクールを立ち上げ、チームで運営している。開校1年半で、教え子は約110名にのぼるという。くわえて、書籍の執筆、講演の登壇などあり、私生活では4歳児の子育てもしている。

<取材・文/鈴木拓也>

【櫻井かすみ】
ファイナンシャル・プランナー、投資の学び舎「トウシナビ」代表。大阪府出身。投資詐欺被害、貯金ゼロ、離婚&無職、再婚直後に不妊治療でもっと貧乏に……、などドン底を経て、極度のお金恐怖症になるも、4年で1000万円まで貯めるのに成功。それから投資を本格化し、純資産は1億円に。お金の増やし方&守り方を、延べ2000人に直接指導している。SNS総フォロワー3万人以上。著書『投資への不安や抵抗が面白いほど消える本』(Gakken)がある。Instagram:@sakura_waamama

【鈴木拓也】
ライター、写真家、ボードゲームクリエイター。ちょっとユニークな職業人生を送る人々が目下の関心領域。そのほか、歴史、アート、健康、仕事術、トラベルなど興味の対象は幅広く、記事として書く分野は多岐にわたる。Instagram:@happysuzuki/